スシロー“ペロペロ事件”を誘発しているのは「接客のシステム化」か?

Japanese Omakase Restaurant counter focuses on Japanese ceramic tea cup with Blur chef cooking at the kitchen counter and directly serve to customers in the background.
 

3.買物か、人に会いに行くのか?

買物は、商品を購入することです。お金と商品を交換して、商品を入手する。

この行為をデジタル化しようとすると、システム屋さんは、省人化しようとします。人が介在しなくても買物ができるようなシステムを組み立てようとします。

まず、何らかの条件設定をして商品を検索、あるいは選択します。でも、自分だけで決められない場合もあります。その場合は、誰かに相談したいと思います。顧客にとっては、重要な相談も、システム屋さんにとってはどうでもいい行為です。商品を決定するのは顧客自身です。相談という行為は重要とは考えません。

ギフトならショップ袋、ラッピングペーパーやリボンを選ぶケースもあるでしょう。これも顧客にとっては重要ですが、システム屋さんにとっては無駄な行動です。ここは商品を販売する場所であって、ギフトラッピングは自分で行えばいいからです。

洋服なら試着します。ショップ店員は試着した姿を確認し、何らかのアドバイスをしたり、お世辞を言ったりします。それで顧客が納得すれば、決済の手続きに移ります。この最後の購入を決定する行為がクロージングと呼ばれ、最も重要とされます。

しかし、システム屋さんは、この重要な作業も顧客が自分で決定すればいいと判断します。

そして、決済の作業に移ります。顧客にとってはお金を払うだけです。しかし、システム屋さんにとっては、最も重要な場面です。顧客情報の入手、新商品の案内をしていいかという許諾、様々な確認事項の説明と承諾、決済方法の確認、そして実際の決済手続きを行います。

近所のスーパーでの日用品の買物であれば、単純に商品と現金を交換すればいいと思います。システム屋さんの発想で十分です。

しかし、買物体験を楽しみと考えている場合は、選ぶ過程が楽しいのであり、信頼している販売員との会話やコミュニケーション、情報収集などが、全て買物体験に含まれます。

特に、人が重要です。買物というのは口実で、「好きな人に会いに行く」「好きな服に会いに行く」「好きな店に遊びに行く」ことが真の目的です。そのついでに商品を買ってくる、あるいは、体験をさせてもらったので、商品を買うことで料金を支払っていることもあります。

この楽しい買物をどのようにシステム化するのかが問われています。単なる省人化や合理化ではなく、楽しみを増大するためのシステム作りです。そして、店と顧客との関係性を深めるためのシステム作りです。

それができれば、初めてDXと言っていいのではないでしょうか。現在、DXと呼ばれているシステムは、ほとんどが単なるD化、デジタル化です。店側の合理化、省人化であり、顧客にとっては関係ないことです。むしろ、本来なら店がやるべき作業を顧客に押しつけているだけです。

顧客が望むXはどこにもありません。顧客満足が向上するXもありません。システム屋さんがDXと言っているだけです。

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