いかなるメディアも自前の記事・番組なのか広告なのかを明確に区別することが求められていますが、出版業界にはグレーな商品が存在するようです。「企業出版」などと呼ばれる企業版の自費出版による書籍がこれに当たります。今回のメルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』では、人気コンサルの永江さんが「企業出版」がなぜ成立しているのかを解説。読者を騙すことにもなるステルスマーケティングの手法は問題が多く、そのうちなくなるだろうとの見立てを示しています。
ステルスマーケティング「企業出版」について思うこと
Question
幻冬舎から企業出版に関しての営業メールが来ました。出版費用は企業持ちで、企業ブランディングとして出版しませんかというものです。
● サービス案内 企業出版とは | 幻冬舎メディアコンサルティング
私ごときが本を出した所で誰も読まないのは明白ですが、このような企業出版は、販売を目的とするのでは無く、書籍を出しているというブランディングを目的にするのであれば有りでしょうか。企業出版に関する永江さんのお考えをお聞かせください。よろしくお願いします。
永江さんからの回答
自費出版は企業のプロモーション策として実施されてはいますが、ぶっちゃけ出版社が最後の延命を懸けてやっているステルスマーケなので、そのうちになくなると思います。
このサービスは、出版社が、個人や会社に自費出版を薦め、出版にかかる費用と最初の数百部か数千部などを買い取ることを約束させ、編集・出版して本を刷るものです。当然ながらそれだけで本が本屋に流通して売れる訳もなく、会社が社長の本を経費で出版し、取引先や社員に配ったりするものです。
いまだに本を出版していると、それだけで注目されていたり、権威があるように見る人もいるので、企業や個人が「本を出しました」と言えるように自費出版させる出版社の営業手法です。今は本が売れなくなっているので、出版社も自らの費用で商品として出版することは少なく、本を出版したという権威付けを事業者に売っている商売です。
でもこれって、ぶっちゃけステルスマーケティングです。自費出版なのか出版社の費用負担で出しているのかでは信用度が全く違うのに、それを読者には伝えていない、消費者をだますような行為です。少し前には、よく情報商材屋がご用達の出版社から本を出していました。
ネット記事やテレビ番組だって、事業者の広告なのか、メディアが作った記事/番組なのかを区別して表記することが当然に求められているのに、本だけこのようなステルスマーケが許される道理もありません。商売が細って廃業間近の出版業界が手を出してしまった先のないグレーな手法なので、長続きはしないだろうと思っています。
この記事の著者・永江一石さんのメルマガ
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