「算数・数学の自由研究」の見事な想像力。それとは真逆な日本の大人たち

 

まず1つ目は、塩野直道賞小学校高学年の部の「草は考えている!?」(小6男児)です。家のお手伝いの草むしりで、抜いた草の根の長さに驚いた男児は、草の地上の長さと草の根の長さの関係性を分析しました。

150本のサンプルの草の地上部分の長さと地下部分の長さを記録。度数分布表で中央値を算出し、それを基準に2つのグループに分けて傾向を考察したり、両者の関係性をもとに5つのグループに分類し最大値を考察したり、相関係数を算出するなど、さまざまなデータ分析の手法を工夫しました。

その結果「草が小さいときは、根を成長させ、ある程度大きくなったら土の状態によって根の長さが変わっていると推察。「つまり、草は考えていたのだ!」という結論を導きました。

そして、これをもとに人間についても思考をめぐらせ、「自分も土台がしっかりした人間になりたい!」というすばらしい感想をまとめています。

2つ目は、学研賞を受賞した「2/365日消える信号」(中2女子)です。これは西日による信号機の視界不良による自動車交通事故をきっかけに、信号が夕日で見えなくなる日を特定できないか?と考え、さまざまな計算を駆使し、特定することに成功した研究です。

まず最初に、自動車が「ブレーキを踏まなければならない地点」を算出。事故の日時から、この地点の日の出・日の入り・日暮を理科年表などのデータをもとに詳細な計算を行いました。

その結果、1年に2回、信号と太陽が重なる日があることを発見。具体的な日時を特定することに成功しました。信号機の西日対策は、信号機のライトや角度を変えることで進められてきましたが、ハード面だけではおぎなえない「穴」を見つけたのは大発見です!

どちらの研究も、日常の生活で生じた「なぜ?」を解く方法を考え、分析し、ただの数字遊びに終わらせるのではなく、社会へのインプリケーションを想像しています。

他界した大江健三郎さんは「想像力とは、対象への能動的な意識である」と解きます。「目に留まってそのものに意識を向ける時、すでに想像力が関与している」と。「どんなものか知ろうとしたり、認識しようとしている時も想像力が働いていて、どんな風に認識するかを想像力が担っている」のだと。

子供たちは、決して目に留まったものを見過ごしません。意識を向け、想像力を働かせている。かたや大人はどうでしょうか?大人の常識が物事の本質を探る目を曇らせているように思えてなりません。「自分の頭で考える」ことの楽しさ、大切さを子供は教えてくれている。

さて、みなさんは想像力を働かせて、ご意見、ご感想お聞かせください。

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