なぜ韓国ユン大統領は日本に接近してくるのか?背景にある「3つの要素」

2023.03.23
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反日を国是とするかのような前政権とは打って変わって、日韓関係再構築に積極姿勢を見せるユン・ソンニョル大統領。複雑な両国の関係は、このまま一気に「雪解け」と行くのでしょうか。そんな日韓の今後を考察するのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、ユン大統領が対日接近を図る背景を紹介。さらに日本が韓国に対して警戒心を捨ててはいけない理由を解説しています。

韓国ユン政権が対日接近を図る理由。「徴用工問題」だけじゃない日韓関係特有の「リスク」に注意せよ

韓国のユン・ソンニョル大統領が3月16日から1泊2日の日程で日本を訪問し、岸田首相との間で日韓首脳会談を行った。会談では、政治や経済など多岐にわたる分野で双方の間で意思疎通を活発化させていくことで一致した。特に、サプライチェーン強化や機微技術流出対策など経済安全保障分野での協力を緊密化させる方向で、両国の首脳が形式にとらわれず頻繁に訪問するシャトル外交を12年ぶりに再開させることで合意した。

ユン大統領と岸田総理は共同記者会見後、すき焼き店と洋食店の2軒をはしごして酒を酌み交わすなど日韓関係の改善を強くアピールした。

ユン大統領は昨年5月に就任してから、ムン前政権で冷え込んだ日韓関係の改善に重点を置いてきた。昨年6月のスペイン・マドリードで開かれたNATO首脳会合や9月下旬の国連総会、11月中旬のASEAN関連首脳会議などを利用し、ユン大統領は岸田総理と言葉を交わし、会談を行うなどし、それが今回の訪日に繋がった形だ。

日本も日韓関係の改善が必要なのは理解してきたが、徴用工問題などがあり自ら歩み寄る行動は取って来なかった。ユン大統領の韓国が日本へ積極的に歩み寄ってきたのが今日の構図である。では、なぜユン大統領は対日接近を図るのだろうか。その背景には、自由民主主義国家韓国が抱える事情があり、日本と同じような課題を抱えている。

狂気の金正恩に危機感募らすユン大統領

まず、北朝鮮の存在だ。北朝鮮は昨年計29回、55発と異例のペースで弾道ミサイルを発射した。今年も入ってもICBM大陸間弾道ミサイルを発射し、北海道の西約200キロの日本海に落下するだけでなく、北朝鮮の偵察用ドローンがソウル上空の近郊まで接近するなど、挑発的な行動を続けている。

北朝鮮は自ら発射したミサイルを米軍が撃墜したら宣戦布告とみなす、太平洋を射撃場にするなどと警告しており、予断を許さない情勢が続いている。これに対してユン政権は米韓合同軍事演習を積極的に行うことで北朝鮮をけん制し、2月には北朝鮮による核兵器使用を想定した机上演習「拡大抑止手段運営演習(TTX)」が米国で実施された。ユン政権としては、北朝鮮のミサイルの脅威に直面する日本との連携を強化し、日米韓3カ国の結束を強化したい狙いがある。

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