アメリカが招いた混乱を収拾へ。世界各地の戦争「停戦」に動き始めた中露

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3月20日、モスクワを電撃訪問した習近平国家主席。多くのマスコミはその真意を掴みかねているようですが、視点を変えると立ち上がって見えてくるものもあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、習主席の訪露に先立って発表された「12項目の姿勢表明書」に注目。その内容と昨今の習近平政権の動きなどから中露会談の意味を考察するとともに、対米追従を続ける日本が国家として沈没する理由を解説しています。

中露モスクワ会談の意味

中国の習近平主席のロシア訪問が終わった(3月20-22日)。マスコミは中露敵視・中露結束軽視の歪曲報道ばかりだ。対照的にオルトメディアは、この訪露による中露の結束強化が、中国とロシア、それから非米側諸国にとって重要であると指摘している。ウクライナ戦争だけでなく、米覇権の崩壊と多極化という大きな流れの全体にとって大事な転換点になりそうだ。しかし、何がどう重要なのだろうか。オルトメディアを読んでも、今のところまだ明確な分析に出会っていない。自分で考えてみる。

China Gives US Advice On Ukraine After Xi, Putin Pledge To Shape New World Order
Joint Russo-Chinese Statement: US Biowarfare Activities, AUKUS Submarines & Prospects of Nuclear War

私が最も注目したのは、習近平が訪露に際して発表した12項目の姿勢表明書(ポジションペーパー)だ。これは、ウクライナ戦争と今後の世界がどうあるべきかについての中国の考え方を書いた条文だ。そしてその1番は、全ての国家の主権や領土を尊重すべきで、国連憲章など国際法も遵守されるべき。2番は、(NATOに代表される)冷戦思考を捨てよ。自国の安全を守るために他国を犠牲にしたり、軍事ブロックを作るな。(露敵視のNATOに替わる)バランスのとれた欧州の安保組織の構築を支援する。(NATOと中露が対立するのでなく欧州と中露が)協力してユーラシアの平和と安定を維持すべき…、となっている。

China’s Position on the Political Settlement of the Ukraine Crisis
Full text: China’s position on settling the Ukraine Crisis

3番から12番はウクライナ戦争の和平策についてだが、他の国際紛争の解決にも使える内容が多い。中でも10番は(米国側による対露制裁など米国が発する)国連安保理の決議に基づかない経済制裁をやめるべきだ、と言っている。これらの内容から感じ取れるのは、中国がこれから米覇権に代わる多極型世界の主導役になっても、中国自身が昔から言っていた「国連が目指してきた国家主権重視・協調重視・覇権の機関化」を推進する姿勢を変えないだろうということだ。中国は「中露が米国に取って代わるだけの覇権交代」をやろうとしていない。そうではなくて中国は、ロックフェラーなど米資本家らが2度の大戦で大英帝国から覇権を移譲されて作った国連中心の世界体制を70年ぶりに蘇生しようとしている。

Xi-Putin Meeting Marks Tectonic Geopolitical Shift Which West Not Ready for

国連中心の世界体制は、英国が軍産複合体を作って起こした冷戦によって分裂させられて機能不全になった。国連を作った米上層部の勢力は「軍産のふりをした隠れ多極主義者」となって米中枢に存在し続け、ベトナムやイラクやウクライナの戦争をわざと過激化して大失敗させて米覇権を浪費し、代わりに中露が台頭してBRICSや上海機構など多極型の覇権構造を作って米覇権の自滅後に代替する流れを誘導した。そして今、米欧が金融崩壊してドルの基軸性が失われていきそうな中で、実際に中露主導の非米的・多極型の世界が立ち上がってきている。今回の習近平の訪露は、その立ち上がりを象徴する出来事だ。中露の政府は最近、多極化とか多極型世界といった言葉を頻繁に使うようになっている。習近平の訪露の主眼は、中露結束による世界多極化推進・多極型世界の構築の加速であろう。

Russia-China ties have no limitations – Putin
Xi Jinping sees `irreversible’ shift to multipolar world

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