アメリカが招いた混乱を収拾へ。世界各地の戦争「停戦」に動き始めた中露

 

中国は、75年前の国連の創設で最も得をした国だ。安保理常任理事国(P5)になることが内定した1943年当時の中国は、何十年も日本など列強に蹂躙された挙げ句、国共内戦も起きて国家の体をなしていなかった。P5のメンバーを決めるカイロ会談に招待された中国(中華民国)の蒋介石主席は当時、日本に追い詰められて山奥の四川省に逃げ込んでいたゲリラ勢力の頭目に過ぎなかった。米国が、そんな中国を世界の5大国の一つに引っ張り上げた。

米国の多極側に引っ張り上げられた中共の70年

そのような歴史を見ると、国連主導の多極体制(覇権の機関化)を中国が切望するのは当然だ。中国だけでなく、米国以外の多くの諸国が、国際紛争を仲裁する時に「国連憲章の精神に沿って」と言っているが、口だけだったりする。中国だって口だけだろうと、軍産うっかり傀儡の人々(軽信がひどくて頓珍漢な中露敵視に陥っている左翼リベラルとか)は言いそうだ。しかし、中国と国連の歴史的な関係を見れば、米国の覇権が崩壊したら国連主導の多極体制を作りたいと中国が考えて当然なことがわかる。

中国が好む多極・多重型覇権
Russia-China ties have no limitations – Putin

習近平は昨秋の共産党大会で国内の独裁体制を固めた後、外交大国になる道を猛然と走り出し、非米側の金資源本位制を強化するために大産油国であるサウジとイランの和解を仲裁し、それが終わるとすぐにロシアを訪問してプーチンと多極型の世界運営について話した。今回の習近平の訪露自体が、中国がロシアと共同で米覇権崩壊後の世界を作っていこうとしていることを示しており、多極型を志向する中国の姿勢を表している。多極体制は、中国(など非米諸国)を大きく安定・発展させる。中国は今、ロックフェラーら国連創設者たちに75年ぶりに「恩返し」している。番頭のキッシンジャーも(表向き別なことを言いつつ実は)ご満悦だ。

Here’s why Xi’s Moscow visit is a key moment in the struggle to end US hegemony

中国のウクライナ和平提案に対し、米国は「中国はロシアのプロパガンダをオウム返しにしているだけであり、信頼できる仲裁者でない」と一蹴している。米欧は中国の和平案を無視して、追加の兵器弾薬をウクライナに送る戦争扇動策を決めている。だが対照的にウクライナのゼレンスキーは、中国の和平提案を歓迎し、習近平とバーチャル対談したいと言い続けている。ゼレンスキーは米英の傀儡でなかったのか??よく見ると、米国は中国提案に反対しているが妨害しておらず、ウクライナが中国と話し合うことを黙認している(隠れ多極主義的)。欧米がウクライナを軍事支援できなくなったら、ウクライナは中国の和平仲裁に頼るしかなくなる。ゼレンスキーはそのへんを見越している。

ZH Geopolitical Week Ahead: Ukraine Validates China As Future Peace-Broker While US Left Behind
Ukraine afraid to criticize China – Politico

中国はイランとサウジの和解を成功させ、ウクライナの仲裁を提案して、短期間で外交大国にのし上がった。12項目のウクライナ和解提案は、他の地域の紛争解決の原則として使える。ロシアも同期してシリア内戦の終結処理(トルコとアサドの和解仲裁、アラブとアサドの和解支援など)を進めている。中露は、共同でアフリカの安定化策も手がけ、これまでアフリカに覇権下に入れて混乱させるだけだった米仏の影響力を排除している。中露は、米国側が起こした世界各地の戦争を停戦させ、米国流の不安定化策を無効にする策を大々的にやり始めている。

Putin makes prediction about Africa
The battle for African hearts and minds: Here’s why the West is upset about Russia’s growing influence on the continent

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