コロナのニュースすら流れない国も。ちっとも「脱マスク」が進まぬ日本と海外の差

 

コロナがニュースにすらならない国も。ここまで違う海外マスク事情

世界におけるマスクの着用はどうなっているのだろうか。

イギリスはいち早く「コロナとの共生」に転換、街中でのマスク着用はまれ。アメリカのニューヨーク州は、医療施設での着用義務を撤廃。

一方、韓国や香港では着用の義務は解除されたものの、しかし着用を続ける人が目立つという。

イギリスは昨年1月、マスク着用の義務を原則、撤廃した。かつては、公共機関などでの着用が義務付けられ、ロンドンでは違反すると200ポンド(約3万2,000円)の罰金が科される時期もあり、マスク姿が一般的な時期も。

しかしマスク着用の義務が解除された現在では、新型コロナのニュースが主要メディアで報道されることも、ほぼない(*4)。

アメリカのニューヨークでも、昨年の2月に屋内でのマスク着用義務を撤廃。9月には公共交通機関、今年2月には病院など医療施設での着用義務をそれぞれ解除した。

現在は、医療施設でのマスク着用については、必要性を各施設が個別に決定する形に(*5)。

他方、東アジアでも「脱マスク」が進むものの、しかし着用を続ける人も多い。韓国は1月末、屋内での着用を解除したものの、公共交通機関での着用義務は継続した(*6)。

「政治判断」で危険な橋を渡るも「政治責任」は取らぬ岸田首相

なぜこのタイミングで政府から「ノーマスク」の方針が出てきたのか。背景に“政治的意図”が透いて見える。

政治ジャーナリストの泉宏氏は、東京新聞の取材に対し、

「政権浮揚と、5月のG7(先進7カ国)広島サミットを成功させるために岸田首相は政治的な賭けに出た」(*7)

とし、

「もともと首相はウィズコロナによる経済再生を掲げ、コロナ政策を転換する時期を探っていた。政府内には『G7で各国首脳にマスクを着けさせて記念撮影するのか』という声もあった。準備などを考えると、1月に方針を打ち出すしかなかった」(*8)

と分析したうえで、

「多くの地方では、まだコロナの流行が収まっていない。首相の決断がうまくいくのか、裏目に出るのかは分からず、危険な橋を渡った」(*9)

と語る。

一方、精神科医の和田秀樹氏は、

「政府はマスクを外しても大丈夫とは言わず、責任逃れを優先している印象だ。英国のジョンソン元首相が安全宣言したように、政治が腹をくくってメッセージを出さないと、一般の人たちの行動を変えるのは難しいのでは」(*10)

とした。

■引用・参考文献

(*1)野口憲太・森本美紀・米田悠一郎「マスク個人判断に」朝日新聞 2023年3月14日付朝刊 3項

(*2)野口憲太・森本美紀・米田悠一郎 2023年3月14日

(*3)高橋豪・益田暢子「マスク緩和 少しずつ」朝日新聞 2023年3月10日付朝刊 1項

(*4)ロンドン・ニューヨーク・ソウル・香港・北京=共同「欧米、マスク姿まれ」西日本新聞 2023年3月14日付朝刊 2項

(*5)共同 2023年3月14日

(*6)共同 2023年3月14日

(*7)宮畑譲・岸本拓也「こちら特報部 マスク巡る分断再び? 政府は『個人の判断』と言うが…同調圧力社会の日本で外せるのか」東京新聞 2023年1月31日

(*8)宮畑譲・岸本拓也 2023年1月31日

(*9)宮畑譲・岸本拓也 2023年1月31日

(*10)宮畑譲・岸本拓也 2023年1月31日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年3月25日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2023年3月配信分

  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月26日(日)号 ガーシー議員 参院除名決定 「除名」とは? 過去の除名議員 世界から40年遅れの主権者教育(3/26)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月25日(土)号  イギリスBBCがジャニー喜多川氏のドキュメンタリーを放送 ジャニー喜多川氏とは何者なのか なぜジャニーズのスキャンダルは“タブー”なのか(3/25)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月19日(日)号 野球「WBC」で考える野球の国際化  MLBの国際化戦略 アジアから欧州へとシフト 一方、懸念される韓国と台湾における野球離れ(3/19)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月18日(土)号 放送法「政治的公平」めぐる総務省文書の本当の問題点 日本のマスゴミは、自ら「報道の自由」を放棄した 異常な放送行政(3/18)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月12日(日)号 「エホバの証人」問題、注目 「エホバの証人輸血拒否事件」 むち打ち 忌避(3/12)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月11日(土)号  成田悠輔氏の高齢者差別発言の本当の問題点 ~2~ 成田氏が”スルー”する、日本の高齢者支配の本当の問題点 政治・メディア・経営者 成田氏だけでなく、ひろゆきも海外から批判(3/11)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月5日(日)号 成田悠輔氏の高齢者差別発言の本当の問題点 ~1~ 天皇陛下に対しても「自決しろ!」というのか? 特殊詐欺犯と同じ思想 それを”エイジズム”という(3/5)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月4日(土)  ChatGPT の凄さと限界 ChatGPT を支えるマンパワーの闇 問われる人間側の学習号(3/4)

2023年3月のバックナンバーを購入する

2023年2月配信分

  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月26日(日)号 難航するスウェーデンとフィンランドのNATO加盟 なぜトルコは反対する? トルコの独自外交にみる 「したたかさ」(2/26)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月25日(土)号 ロシアのウクライナ侵攻から1年 一方、ロシアを支持するグローバルサウス ロシア、核を使うか(2/25)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月19日(日)号 相次ぐ凶悪犯罪 しかし日本の治安は本当に悪化しているか? 世界と比べて少ない日本の警察官の人数 結局は警察機構の「やるやる」詐欺か?(2/19)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月18日(土)号 再び起こる「飯テロ」の背景 問題の本質は何か? ”トイレ”と化すワイドショー報道 マスコミの報道が模倣犯を生む(2/18)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月12日(日)号 荒井秘書官 同性婚めぐり差別発言 更迭 ~2~ 人権後進国日本 統一教会”同性婚ヘイト”受け継ぐ岸田政権 すでに日本人は国を「捨てて」いる 増える海外移住者 (2/12)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月11日(土)号 荒井秘書官 同性婚めぐり差別発言 更迭 ~1~ 問題の経緯 オフレコとオンレコ 荒井秘書官とは(2/11)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月5日(日)号  映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~3~ 映画の“多様性は”どこまで守られるのか 日本のミニシアター文化を維持していくために (2/5)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月4日(土)号 岸田首相「異次元の少子化対策」の行く末 「晩婚化」というウソ 奨学金問題 福祉国家でも少子化が進んでいるのというのに (2/4)

2023年2月のバックナンバーを購入する

2023年1月配信分
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月29日(日)号 ゴッホ「ひまわり」トマトスープ事件と地球温暖化懐疑論者 どちらがより暴力的か、冷静に考えよう(1/29)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月28日(土)号 福岡・博多ストーカー事件の背景 求められる性教育のアップデート 平等教育の徹底を(1/28)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年1月22日(日)号 アフガニスタンは今どうなっている? アフガニスタンの歴史 タリバンとは? 飢餓 女性差別 臓器売買(1/22)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月21日(土)号 “ガラパゴス”国家の象徴 「駅伝」 その弊害 主催がマスゴミなので報道せず 代わりに教えよう(1/21)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月15日(日)号 岸田首相“唯一の”レガシー 原発再活用の虚構 「原発回帰は歴代政権が手が出せなかった」 原発燃料、結局はロシア頼み(1/15)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月14日(土)号 米国下院議長 投票15回目でようやく決まる マッカーシー議員とは? 下院議長とは? 「フリーダム・コーカス(自由議連)」が造反(1/14)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月8日(日)号 映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~2~ 東宝一強体制の理由 しかし国際市場では通用せず(1/8)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月7日(土)号 岸田首相、防衛増税前の「解散」発言が波紋 萩生田氏の口車に乗せられて? 自らの首を絞めるのか(1/7)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月1日(日)号 中国、「ゼロコロナ」対策転換で感染爆発 若者の反発恐れ、方針転換 今後、死者149万人との予測も(1/1)

2023年1月のバックナンバーを購入する

2022年12月配信分
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月31日(土)号  映画「すずめの戸締り」にみる日本社会の戸締り ”誰が開きっぱなし”の扉を閉めるのか?(12/31)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月25日(日)号 国民民主党、連立入り? 自民と国民、共鳴する”民社党”の遺伝子 統一教会との関係も 公明党はどうなる? 創価学会の集票力懸念(12/25)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月24日(土)号ディズニー&ジェームズ・キャメロンVS和歌山・太地町&二階俊博 映画「アバター」続編で対立の火ぶたが切って落とされる なぜ日本はイルカ漁に固執するのか? 結局は”利権”目当てか?(12/24)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月18日(日)号 防衛省が”ステマ”工作研究? 自称インフルエンサー、所詮は利用される運命(12/18)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月17日(土)号 どうなる? サッカーW杯2026年大会 48カ国が参加 グループステージは3試合から2試合へ 高騰する放映権料 もはや“有料”放送が当たり前?(12/17)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月11日(日)号 旧統一教会と地方議員の”接点”明らかに 一方、障害者支援施設SANCYO/TANOSHIKAの嘉村裕太は、精神障害者に対し、「政治に文句をいうなら統一教会の支援を受けて政治家に立候補せよ」と圧力 福岡県大川市長倉重良一・久留米市長原口新五も同調(12/11)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月10日(土)号 どうなる、岸田首相の行く末は? 退陣? 早くても年内まで?  「検討使」の裏で着々と右翼政策は実行  自民、国民民主と連立?(12/10)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月4日(日)号 防衛費増額 有識者会議にメディア関係者  法人税増税盛り込まず 自民党とマスコミ(12/4)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月3日(土)号 政治問題化するサッカーW杯 なぜカタールへの招致が決まったのか? カタールと日本 カタールで起きていることは、未来の私たち 地球温暖化とスポーツ(12/3)

2022年12月のバックナンバーを購入する

image by: wueelongsupply / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版) 』

【著者】 伊東 森 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print
いま読まれてます

  • コロナのニュースすら流れない国も。ちっとも「脱マスク」が進まぬ日本と海外の差
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け