全メディアが沈黙。ジャニー喜多川「性加害」問題を報じぬニッポンの異常

 

未成年者に強姦や性的虐待を繰り返していた人気司会者

この10年で、性暴力に対する世界の目は格段に厳しくなった。英国で大きく意識が転換するのは、テレビの子供向け番組の人気司会者、ジミー・サヴィル氏が未成年者に強姦や性的虐待を繰り返していたことが発覚してからだ。

2011年10月29日にサヴィル氏が亡くなった後、レイプされたという証言が続出し、被害者は10歳未満の児童を含む男女200人以上におよんだ。

サヴィル氏は慈善活動家としてチャールズ皇太子やサッチャー首相と親交を深め、その社会的信用と権威性を武器に少年少女を意のままに操っていた。

「サヴィルとバッキンガム宮殿、BBCは邪悪な三角関係にあった」と批判するアザー氏が、全く同じような構図で少年たちを凌辱したジャニー喜多川氏に関する取材を日本で敢行し、ドキュメンタリー番組に仕立てて、この問題に無関心な日本社会に疑問を突きつけたのだ。

アザー氏はこのなかで、元ジャニーズJrの男性たちが喜多川氏のことを悪く言わないことにショックを受け、「これはグルーミングだ」と指摘した。

権力や特権のある人間が、わいせつ目的を隠して子供や少年少女に近づき、やさしくして手なずける。そのような概念の言葉らしい。被害者は自分に好意を持ってくれている、特別な絆があるなどと思い込み、加害者に嫌われないために従順になる。

「ジャニー氏に非があったとは言いたくないようですが、なぜなのでしょう?」とアザー氏が問いかけると、元ジャニーズJr.のリュウ氏はこう語った。

「これはなんでなんだろうなあ。やっていることの良し悪しは絶対に悪いことなんですけど。簡単に言えば、ジャニーさんのことが嫌いじゃない、むしろ好きなんで僕は。今でも大好きですよ」

ジャニー氏の性癖を承知の上で息子を入所させる親もいるようだ。同じく元ジャニーズJrの淳也氏が語る。

「親はジャニー氏の少年愛を知っているけど、ジャニーズ事務所に入れたい。それを受け入れたのが日本。トップ企業にのし上げたのが日本なんですよ」

悪いことをされているとわかったうえで、少年のほうも功利的な計算を働かせていた面も否定できない。

外国特派員協会で記者会見したカウアン・オカモト氏は、ジャニー氏の行為を我慢していた理由や、我慢しないとタレントとして不利になるのかを問われ、こう答えた。

「直接ジャニーさんが、それをしないと売れないよとは言わないんですけど、そもそもジャニーズっていうのは、ジャニーさんが気に入っている子たちだったり、推している子たちが基本的にデビューをする。…ジャニーさんがピックアップしてドラマに決まったとか、ジュニアでグループ組んだりとか、CMが決まったりとか。…ジュニアの中でもやっぱり『マンションに行かないと売れないよね』ということだったり…その認識でみなさんいますので」

だが、BBCの番組に登場したもう一人の元ジャニーズJr、ハヤシ氏は感情をこらえきれない。

「ジャニー氏がお風呂に入れてくれました。すごい親切だなと思っていたら、上着を脱がしてくれた。そこまではまだ親切だなと思っていたところ、ズボンに手を入れてきて、自分で脱げますと言った時に無言だった。それがすごい恐怖心で…そのまま何もできず…ズボンも脱がされてパンツも脱がされ、靴下脱がされ、全身を洗われて、お人形さんみたいに…」

涙を流し、身体を震わせる。やはり、心に受けた傷は深いのだ。

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