高齢化社会へ突入した韓国。この国ではなぜ高齢者が「差別」を受けるのか?

Seoul, Republic of Korea - March 2019: An eighty year old woman with a stick crosses the road.
 

帰国数年でアメリカ国籍を捨てた。「政治をしようとして来た」とか「ちょっとして帰る人」という視線が多くて最初から国籍を整理してしまったのだ。これまで協会活動に私財数十億ウォンを投じてきた。米国から持ってくるお金で駄目になると、忠清南道牙山市(アサンシ)にあった土地を徐々に売った。後には先祖からの山まで無くしてしまった。

「子供たちは皆アメリカ人になってしまったし、私が死んだら墓があっても来る人がいません。なのでこれを機に山も整理しました」

米国と韓国を行き来しながら過ごす夫人は帰国数年後、夫に「だまされた」と言った。実状は彼も同じ気持ちのようだ。アメリカでやっていた通りにすれば何でもうまくいくと思ったが、彼の善意はあまり効かなかったようだ。

彼は先日から「協会を代表する人物を探す」という書類を持ち歩いている。「離れ際を知らなければなりません。しかし多くの人が関心を示しながらも『お金にならない、かえって自分の金を使うことになってしまう』という言葉だけが聞こえてきて困っています」

「後任者が見つかるまで、力の及ぶ限りやってきたことを続けるつもりです。オフィスの人たちに話します。ある日出勤してみたら、私が倒れているとしても驚くなと。ハハ」

彼が故国に帰ってきた2000年代初めに高齢化率7%を超えたばかりの韓国は、2025年には20%の超高齢社会を目前にしている。社会環境は、やっと彼が撒いた種が花を咲かせる環境になりつつあるわけだ。

韓国社会が少しでも準備された状態で高齢社会を迎えることができるようになったのには、彼の苦労も一役買ったようだ。栄誉ある人生後半を夢見て歩んできた彼の最後のダンスがどのように展開されるのか、気になるところだ。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年4月26日号)

image by: Shcherbakov Ilya / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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