高齢化社会へ突入した韓国。この国ではなぜ高齢者が「差別」を受けるのか?

Seoul, Republic of Korea - March 2019: An eighty year old woman with a stick crosses the road.
 

――チュ代表は普段、韓国社会に老人差別、老人軽視文化が蔓延していたと指摘したりします。韓国で高齢者はなぜ差別を受けると考えますか。

「差別されるということは弱者だという話です。なぜ弱者になったのでしょうか。自ら力をつけて声を出せないからです。差別から抜け出すためには、自ら賢くならなければなりません。ただ、責任を果たしながら権利を主張しなければなりません」

ここにはニューヨーク韓人会長として働きながら、米国政界を相手にした時の経験が深く溶け込んでいる。

「私たち韓国のお年寄りは待遇を受けようとする考えが強い反面、自ら寄与しようとする考えは少ない傾向があります。民主市民の訓練や社会システムが整っていない時代を生きてきたからです。しかし世の中が変わりました。老人になったことを官職(ふんぞり返る)についたかのように錯覚した瞬間、無視されてしまいます」

彼によると、米国引退者協会のモットーは「ボランティアを受けずに奉仕せよ(Serve、not to be serverd)」だ。高齢者になっても社会に寄与し、本人分の責任を果たしながら権利を探すという姿勢だ。反面、自らの力を自覚できなければ、タダを望んで利己的にならざるを得ない。

「利己的で次世代のことを配慮しない老人だったら、悪口を言われるしかないですよね」

その例として地下鉄の無賃乗車論議を挙げた(韓国では65歳以上の人は電車、地下鉄が無料。外国人は例外)。

「(無賃乗車を主張する側は)どうせ動いている電車なんだから何人乗っても何の問題かと言いますが、それはすべて費用が発生します。ただ乗りは、恩恵年齢層を高め差別化しなければなりません。障害者などは無料、高齢者は割引制でいくらかでも払って乗るべきですね。なぜこのようなことで後輩世代に負担をかけるのですか」

「同じ理由で会員たちに『マ・カ・イ』を勧めている。『学んで稼いで生きよう』を略した言葉です。大した仕事が欲しいわけでもありません。国民年金と合わせて月150万ウォン(15万円)程度確保できる働き口で十分です。引退者にも強調します。大金を稼ごうと欲張るな、半分は奉仕、半分は暇つぶしだと思ってありがたく働こう」

チュ代表は、20代で大韓航空に入り、乗務員から事務長まで9年間働いた。30代で米ニューヨーク・マンハッタンに定着した。一帯でマクドナルド売り場を4つも経営し、現地メディアの注目を集めた。

――アメリカで成功したのに、国内に戻ってきた理由は何ですか。

「どうすればやりがいのある有意義な老後を送ることができるか悩んでいたところ、AARPを発見しました。ニューヨークからワシントンまで4時間車で行き来しながらAARPについて勉強しました。1996年ニューヨークに大韓引退者協会を設立し、在米韓国人のための翻訳サービス程度の仕事をしていました。ところが1997年末、韓国にIMF(国際通貨基金)通貨危機が起きました。高齢化と経済危機を同時に迎えた韓国に役立つことをしなければならないと決心しました」

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