4月からの異動で新しい部署になった人も多いかと思いますが、新しい部下になじめないという悩みを持つ上司の方も少なくないと思います。メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』著者で、世界的なコンサルティング会社マッキンゼーで14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さんが、そんな部下の気持ちをつかめない上司に対して回答しています。
今の部署に4月から異動してきて、1ヶ月たちますが、部下の気持ちをまだつかめていないようです。やることはやっていると思うのですが
Question
新卒で13年、二度異動し、今の部署には4月からグループリーダーとして着任しました。管理職は初めてです。部下は9人いますが、部下の気持ちをまだつかめていないように思います。自分の考えがうまく伝わりませんし、心を開いてもらっている感じもしません。仕事はそつなくこなしていると思うのですが、あと何を変えればいいのでしょうか。
赤羽さんからの回答
ご相談どうもありがとうございます。部下の気持ちをつかめていないと感じられるのであれば、その通りだろうと思います。つかめていると思ってもあやしいことのほうが多いので、つかめていないと感じられるのであれば、その予感は的中していると考えておいたほうが安全です。
「自分の考えがうまく伝わらない、心を開いてもらっている感じがしない」とのことですが、そもそも、新グループリーダーとしてグループのビジョンを明示し、そのための達成方針を5~7ヶ条で示し、それを実現するための5~10のアクションを示し、それを一人ひとりのタスクに落とし、それぞれに定量的・定性的なKPIを設定し、合意した上で、週次のKPI進捗確認会議を開催して強力に推進しておられますでしょうか。
それなしで、「自分の考えがうまく伝わらない」と思っても意味がありません。自分の考えを十分伝えず、どうすれば達成できるかも指示していないわけですから。
私の経験では多くの上司がこういう状況で、部下のやる気のなさ、スキルの低さを嘆いておられます。
まずは、今お伝えしたように取り組んでみていただけますか。
グループのビジョンを明示することも決して簡単ではありません。全社および上の組織のビジョンを踏まえて、それに沿ったビジョンを考える必要があります。全社および上の組織ビジョンが明確に示されていないことは日常茶飯事です。あるいは、どう考えてもちょっと不十分だったり、整合性が乏しかったり、間違っているのではと感じられたりすることも少なくありません。
それを嘆いても始まらないので、全社および上の組織のビジョンを踏まえながら、自分として納得のいく、部下にも初めて伝わるようなビジョンにしていく必要があります。そのビジョンは全社および上の組織のビジョンよりビジョンとしてのレベルが高いものかもしれません。
つまり、上司として、かなりのスキル、知見、見識が要求されるわけです。ここを棚に上げて、「自分の考えがうまく伝わらない」というのは、やめましょう。
ましてや、「心を開いてもらっている感じがしない」のは当然です。上司としてのリーダーシップが十分発揮されていない状況では、部下が心を開くも何も、チームとして成果を出していくことが出発点になります。
チームとして成果が出始めると、手のひらを返したように、部下の目の色が変わり、取り組み姿勢が変わり、いろいろな意見も言い始めます。本気の相談も始まります。
こういう状況を3ヶ月でも続けることができれば、「心を開いてもらっている感じがしない」とは思わなくなってくることでしょう。手応えも十二分に感じられることだと思います。
なお、ビジョンを明示するのと同時に、そのビジョンを達成するための達成方針を5~7ヶ条で示します。ビジョンはかなり難易度の高いものなので、部下のほうも「それはちょっとむずかしい」「そんなのできたらいいけど、無理なんでは?」と考えるのが普通です。
その懐疑心を打ち砕くような、全体観ある具体的な達成方針ですね。それを聞けば、「そうか、そこまで考えているのなら、そこまでするつもりなら、このビジョンも実現できるかもしれないな」「すごく大変そうだけど、今までの上司と違って、今度の上司は本気っぽいぞ」と考え始めます。
そこでたたみかけるように、達成方針を具体的なアクションに落とし、それぞれのタスクに落とし、定量的・定性的なKPIも合意し、週次のKPI進捗確認会議をすることで、部下は今までとは全く違う姿勢で仕事に取り組み始めます。
要は、部下のあれこれを気にするのではなく、チームとして最大の成果を挙げるための取り組みをきっちりと推進していくのが鍵です。これで少し納得いただけたでしょうか。
上司の役割は、高い目標を示して、部下を駆り立て、素晴らしい成果を出しながら、部下を驚くほど成長させることです。
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