特別支援学級の担任が殺人容疑で逮捕。いま考えるべき「人を犯罪に走らせない社会」を作る方法

Nara,,Japan,-,April,14,,2019:,Back,Of,People,Tourists
 

諸外国と比すればまだ安全とは言えるものの、かつてからは考えられないほどの凶悪事件が多発している感のある日本。この状況に歯止めをかけることは出来るのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さんが、犯罪者を生まない社会づくりについて考察。そのカギとして「ケアの意識を発出しやすくする環境づくり」を挙げています。

ケア意識の発出を促す。犯罪のない社会づくりのカギとなるもの

東京都内では最近、凶悪な犯罪が相次いでいる。

江戸川区で特別支援学級を担当する中学校教員が殺人容疑で逮捕され、大田区では中学生が父親が勤務する客の男に刺され、銀座の高級腕時計店には白昼堂々の強盗事件が発生した。

江戸川区の現場は自宅から近く、大田区は仕事の場としてなじみ深いし、銀座は毎日通勤で通過する場所である。

それぞれの街の表情は平和の中でこそ多様さが強調され、それが最近の東京の魅力となっていたが、犯罪が頻発してしまうと、警戒と防御が優先され窮屈な街になってしまいそうだ。

「犯罪が少ない」「治安がよい」はずの日本の日常は、いつの間にか危険に晒されるのではないかと感じてしまう。

そしてこの感覚が日常になった場合、どんなことがおこるだろう。

精神疾患者の実態を知らないまま、治安維持を名目に法改正が行われた過去など、安全確保に向けて繰り返す私たちの傾向を自覚しながら、冷静に対応を検討したいと思う。

この検討は、とかくその場の雰囲気に流され、自分たちの社会を窮屈にし、時には一部の人の権利を侵すことにもつながってくる。

新型コロナウイルスへの対策で緊急事態宣言を出した政府が国民に行動の制限を呼び掛けた際、それを全体最適と考えつつも、不便な目にあった人がいたのも事実である。

また精神疾患者による犯罪をあたかも疾患者全般の傾向だと決めつけ、疾患者への対応を防犯の枠組みで語り、法律に反映させてきた経緯もある。

この事実は社会からのスティグマとして長らく日本社会に根をはり、多様性社会の実現に向けた障壁になってしまったことを指摘したい。

犯罪の集団はなぜ出来上がるのか、という議論と同時に「社会が犯罪を作り出してはいないのか」という視点、あくまで客観的にレマートらのラベリング論の再考も踏まえて、考えてみる必要がある。

さらに市民が空間としての安全な場所のイメージも共有していきたい。

私たちが住まい、集う場所に犯罪が発生しないための切り口としてインクルーシブな場づくり、という考え方がある。

これはみんなの大学校が取り組む研究テーマでもある。

どんな障がいがあっても公共サービスへアクセスを可能にすることはもちろん、「学びたい」等のニーズに社会が応えていくために「場づくり」をしていこうという内容で今年2年目となる。

この考え方には基本的に町が安全であることが前提であるが、同時に「助け合う」考えや姿勢が日常化することも重要だ。

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