同じ穴のムジナ。TV局だけにジャニーズ性加害問題を押し付けたい無責任な人々

Tokyo,,Japan,-,January,22,,2020:,The,Offices,Of,Talent
 

創業者の性加害に対してこれまで頑なに沈黙を守ってきたものの、5月14日になりついに社長が動画で謝罪を行ったジャニーズ事務所。これを機に各所から、「事実」を知りながら所属タレントを使い続けたテレビ局の責任を問う声が上がっています。そのような状況に異を唱えるのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、テレビ局だけに批判の矛先を向けるような流れに違和感を抱いた理由を解説するとともに、日本社会を形成する私たち一人ひとりが負っている責任について考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

メディアだけの問題なのか?ジャニー喜多川「性加害」疑惑で多くの人が気づくべきこと

やっと、本当にやっと、勇気を振り絞って証言した少年たちにの“声”に、「社会」が向き合いました。

14日夜、ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害疑惑を巡る問題に関して、ジャニーズ事務所の藤島社長が動画を公開。「心よりおわび申し上げます」と謝罪しました。

詳しい内容は多くのメディアが取り上げているので、ここでは書きません。一方で、この件について「テレビ局はこの問題を知りながらも触れなかった。それが被害を拡大した」といった批判を、識者やジャーナリストを名乗る人たちが繰り広げていたことには、少々違和感を覚えました。

確かにここ数十年、テレビ番組は、ジャニーズや吉本などの大手芸能事務所のタレントばかり。芸能番組から報道番組まで、NHKやEテレから民放まで、どこもかしこも“タレント”だらけです。なのに触れなかったといえば、確かに「触れなかった」。

しかしながら、性被害に向きあってこなかったのは、社会であり、「私」たち
でもある。まるで「私は関係ございません。んったく、テレビ局って」という批判は、ちょっとばかり都合良すぎるのではないか、と。社会が、「私」が、被害者の声に真摯に向き合わない限り「変わらない」…。そう思えてなりません。

ジャニー氏からの性被害を声を上げたのは、元フォーリーブスのメンバーです。1988年に出版した自伝で自身が受けた被害を綴り、その後は週刊誌などでも度々報じられてきました。1999年に文春が大きく取り上げた際には、ジャニーズ事務所が「名誉毀損にあたる」として訴え裁判に。結果は、すでにさまざまなメディアが書いているとおり、2003年5月に東京高裁が、「その重要な部分について真実」「真実でない部分であっても相当性がある」として、性加害を認定。ジャニーズ側はこれを不服として上告しますが、2004年に棄却されました。

なのに「社会」はこの問題に関心を示さなかった。

1999年といえば、バラエティ番組「SMAP×SMAP」が20%超の視聴率を記録し、嵐がデビューするなど、ジャニーズ旋風が吹き荒れた時期です。2003年といえば、『世界に一つだけの花』がシングルで発売され、2005年の紅白歌合戦では、出場歌手全員で大合唱しています。

ジャニーズ事務所に所属するタレントに“スポットライト”が当たっているの陰で、法廷で「誰にも知られたくない、言いたくない」話を紡いでいる人たちがいたのに、日本社会は“彼ら”にスポットライトを当てなかった。

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