異例な言動が続く金正恩が今度は“跪く”。独裁者が見せる父親としての顔

 

現地指導先に娘を同行させる等、異例の言動が目立つ最近の金正恩総書記。今回は、人民軍の重鎮であった故 玄哲海氏の墓の前で跪くという、今まででは考えられない行動を取りました。一体何があったのか?メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で、日本で最も朝鮮のことを知っている一人である宮塚コリア研究所の宮塚先生が解説します。

金正恩総書記が非ロイヤルファミリーでは異例の跪いて献花

5月20日付の北朝鮮の労働新聞は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が平壌の新美里愛国烈士陵を訪れ、昨年亡くなった人民軍の重鎮であった玄哲海(ヒョン・チョルヘ)の墓を訪れ、献花したことを報じた。写真では、金総書記が墓の前に跪(ひざまず)いて赤いバラを差し出している様子がとらえられていた。

記事によると、金総書記は、「偉大な朝鮮民主主義人民共和国の息子であり、主体革命が生んだ特出した忠臣元老である玄哲海同志を追悼し黙想した」とし、「国が最悪の局難にあっている時も、国家防疫力強化の新しい転成期を開く時にも、いつも1度も忘れることなく愛する戦士、いつもそばで力をくれて勇気をくれていた玄哲海同志の姿を何回も見て、長く心の中で対話された」と報道した。

指導者自らが、故金日成(キム・イルソン)主席や故金正日(キム・ジョンイル)総書記のようにロイヤルファミリーの肉親ではないにも関わらず、このような低姿勢かつ丁重さは極めて異例である。

また、これに伴い、金総書記は参加しなかったが、朝鮮労働党や政府の幹部が参列した玄氏の追悼大会が開かれたことも異例である。玄氏は、故金日成主席と故金正日総書記時代も最側近として仕えてきた。金総書記が2011年に事実上の最高指導者に就任した際に、権力の掌握を確実にする過程で指導役を務めてきたとされている。

このように、玄氏の業績や忠誠心を強調することで、体制の維持結束を強化する図る狙いがある。新型コロナウイルス防疫体制が緩和され、現地指導先に娘を同行させる等、金総書記の異例な言動が続くのは、かつて自分よりも年上の幹部をひざまずかせていたことがあったが、今では、自分自身が父親でもあり、いつか自分の子息を後継者として育てる過程で、“チョリトゥンダ(物事の分別がつく)”ということなのかもしれない。

(宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)

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