ひとり負けのプーチン。今や戦争犯罪容疑者にまで堕ちた元G8有力国指導者の孤独

 

「バフムトの制圧でロシアが勝利」の無理筋

ウクライナ戦争の戦局については、今まで何度も書いてきました。

1月、プーチンは、ロシア軍のトップゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ特別軍事作戦の総司令官に任命しました。ロシア軍のトップを、ウクライナ戦争の総司令官にする。メチャクチャ気合が入っている。同時に、プーチンがかなり追い詰められていることがわかります。

プーチンは、ゲラシモフに、「ルガンスク州、ドネツク州を3月中に完全制圧せよ!」と命じました。2月、ロシア軍は大攻勢を開始。主戦場は、ドネツク州のバフムトです。ロシア軍は猛攻し、バフムトをほとんど制圧しました。しかし、完全制圧はできなかったのです。

ロシア軍が勝ちきれなかった主な理由は、弾薬不足です。最前線で戦っていた民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジンは、「ショイグ(国防相)!ゲラシモフ(参謀総長)!弾薬はどこだ!?!?!?!」と絶叫しています。以下の動画50秒ぐらいからごらんください。

「弾薬はどこだ」ワグネル創設者が激怒 ロシアが必要な武器供給を「一晩で約束」(2023年5月8日)

これ、「ディープフェイク」だとか、「プリゴジン迫真の演技だ」というのは馬鹿げています。ロシア軍は、実際に弾薬が不足しているのです。だから、ロシア軍は、バフムト以外でも目立った動きを見せていません。

3月末、ウクライナに欧州から戦車が入ってくるようになりました。ゼレンスキーは4月30日、「重要な戦闘がまもなくはじまる」と宣言します。世界は、「近い将来、ウクライナ軍の反転攻勢がはじまる」ことを知ったのです。

さて、ロシアの勝利は確定したのでしょうか?もちろん、そうではありません。ウクライナ軍は反転攻勢の準備を進めてきました。最近では、モスクワへのドローン攻撃もありました。また、ウクライナ側に寝返ったロシア兵の部隊、「自由ロシア軍団」「ロシア義勇軍団」がルガンスク州、ハリコフ州の北に位置するロシア領ベルゴロド州に攻め込んでいます。

「自由ロシア軍」は5月22日、SNS(テレグラム)で、以下のような声明を出しています。

<今の独裁的なロシアでは、平和を訴えただけで、子供が親から引き離され、10代の若者が終身刑になるのだ。クレムリンの独裁を終わらせる時がきた。ロシアは自由になる。>

全世界が今、ウクライナの反転攻勢の行方を注視しています。ですから、「ロシア軍がバフムトを制圧してプーチンが勝利した」というのは、事実と違います。

プーチンは今、何を狙っているのでしょうか?

ロシア側は、「今ロシア軍が支配している地域をロシア領とすること」を条件に、停戦しようとしています。つまり、2014年3月に併合したクリミアは、ロシア領。昨年9月に併合した、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州はロシア領(実際には、ロシアが完全支配を達成しているのは、ルガンスク州だけですが)。

この条件を、もちろんウクライナ側は受け入れることができません。それで、反転攻勢で、ロシア軍に占領されている領土をとり戻そうとしているのです。

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