ひとり負けのプーチン。今や戦争犯罪容疑者にまで堕ちた元G8有力国指導者の孤独

 

プーチンがすでに敗北しているこれだけの証拠

私は、この戦争がはじまる前から、「プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、【 戦略的敗北 】は【 不可避 】と書いてきました。例、2022年2月16日。

全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…!キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない破滅的な侵攻を回避できるか

そして、予想通りに動いています。プーチンは、ウクライナとの戦闘に勝てるかもしれません。あるいは負けるかもしれません。しかし、プーチン自身が主張しているように、この戦争を

  • 西側陣営 対 ロシアの戦い

と見れば、プーチンはすでに敗北しています。なぜ?

かつてロシアは、G8の一員でした。2005年5月9日、第2次世界大戦終結60年を祝うために、世界中の首脳たちが赤の広場に集結しました。

プーチンの横には、ブッシュ大統領。日本からは小泉首相。ドイツのシュレイダー首相。フランスのシラク大統領。中国の胡錦濤国家主席。インドのシン首相。その他大勢。プーチンは当時、世界の大国の長をほぼ全員招いて集結させることができる力と権威を持っていました。

ところが、今はどうでしょう?ロシアのウクライナ侵攻を支持したのは、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリアだけでした。実際、プーチンが「友達」といえる国は、世界に北朝鮮、ベラルーシ、シリア、イランぐらいしかいません。

そしてプーチンには、国際刑事裁判所から逮捕状が出されていて、同裁判所の参加国123か国にいけない状況です。国際社会でプーチンは、「ウクライナの子供たちを誘拐した容疑」で逮捕状が出されている「戦争犯罪容疑者」なのです。

ウクライナ侵攻前、少なくともロシアは、「旧ソ連の盟主」でした。ところが、今やロシアは、その地位も喪失しています。ウクライナ、モルドバ、ジョージアは、EUに加盟申請した。アゼルバイジャンは、ロシアよりもトルコと緊密な関係を築いている。アルメニア、カザフスタンは、ロシアを中心とする軍事同盟CSTOからの離脱を検討している。中央アジア諸国は、ロシアを捨て中国に走っている。

5月19日、「中国中央アジアサミット」で習近平は、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタンの首脳に、「中国・中央アジア【 運命共同体 】を構築しよう!」と提案しました。

旧ソ連である中央アジアはこれまで、「ロシアと運命共同体」でした。ところが、中国は、「中央アジアは中国と運命共同体になろう!」と提案した。世界的に孤立し、金のないロシアと、いまのところ金がたっぷりある中国。中央アジア諸国がどちらにつくか明らかです。

いろいろ挙げましたが、これらすべての事実が、「プーチンは戦略的に負けている」ことを示しています。もちろん、負けても「俺は勝っている」ということはできます。しかし、一般的にそれは、「負け惜しみ」といいます。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年6月4日号より一部抜粋)

image by: Asatur Yesayants / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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