傲慢で間抜けなトランプとバイデンの大罪。中国に「裏庭」を実効支配された米国の落日

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長く「アメリカの裏庭」と呼ばれてきた中南米の国々で今、急速なまでの米国離れが進んでいます。何がこのような事態を引き起こしてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、その理由を詳しく解説。さらにラテンアメリカの構造変動が世界を揺るがす可能性を指摘しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年6月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

トランプとバイデンの無能。アメリカの怠慢外交で中国に占拠された「裏庭」

米バイデン政権が「民主主義国vs専制主義国」という賞味期限切れの図式で世界を割り切り、その前者の陣営の「盟主」として振る舞うことで過去の栄光を取り戻せるかに錯覚していることが、世界の大迷惑であるだけでなく、残念なことに、米国自身の衰弱を早める結果ともなっている。

その米外交の残念な結果が集中的に現れているのが、かつて米国の「裏庭」とまで呼ばれたラテン・アメリカである。同地域の33カ国のうちカリブ海の英連邦傘下国を含む極小国12カ国を除いた主要な主権国家21カ国を見ると、キューバ、ニカラグア、ベネズエラ3カ国のあからさまな反米左翼政権以外にも、9カ国が非親米的な左派政権(注1)であり、さらに右派政権と見なされているグアテマラ、エルサルバドル、ウルグアイの3カ国も非親米的。つまり、主要21カ国中、米国の言うことに従順かと思われるのは残りの6カ国しかない(注2)ということになる。

(注1)メキシコ、コスタリカ、パナマ、コロンビア、ペルー、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、チリ

(注2)ベリーズ、ホンデュラス、ガイアナ、スリナム、エクアドル、パラグアイ

米国に代わってこの地域で存在感を増しているのは中国で、メキシコを除く中南米全域での貿易総額では21年にすでに中国が2,470億ドルで、米国の1,740億ドルを大きく上回っており、南米だけを取ればそれ以前から中国は米国を上回る最大の貿易相手となっている。また、2005年から19年までの中国の中南米諸国への投資額は累計1,380億ドルで、米国を大きく上回っている。それらを反映して、パナマ、エルサドバドル、ホンデュラスなどが次々に台湾と断交し中国と外交関係を開いている。ホンデュラスは上掲(注2)のように、基本的には親米国とされてきたが、米国の強い制止にも関わらず23年3月に台湾と断行し、中国と外交関係を結んだ。

米国が20世紀の延長上の惰性思考で、ラテン・アメリカは未だに自分の「裏庭」だと思って安心し切っているうちに、そこを丁寧に耕し種を撒き草木を育て、実効支配を広げてきたのは中国だった。これを、中国がけしからんと言っても始まらないことで、米国が自分の傲慢故の間抜けぶりを自省しすべきことである。

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