人民の「食事代」でミサイルを作る北朝鮮。猛スピードで色あせていく“金日成の遺訓”

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北朝鮮が軍事偵察衛星を確保しようとする理由は、自分たちの「パンチ」をより正確に飛ばせる「目」を持つためだ。今年初めから北朝鮮が発射した多様なミサイルとドローンは有事の際に韓国を威嚇する「パンチ」だ。北朝鮮は、今や望むところにこのようなパンチを正確に飛ばす「目」が必要だ。

北朝鮮当局は2021年6月11日、朝鮮労働党第8期中央軍事会議拡大会議で重大決定を下した。金正恩は当時会議を主宰し「米国の対朝鮮圧迫は非核化そのものが目的ではなく、中国との覇権競争を念頭に置いた国際政治戦略の一部」と規定した。金正恩はこのような教示に加え「米・中覇権競争が激化し戦争が勃発した時、中国側で一定部分の役割を果たさなければならない」としてそのための戦略軍改編を指示したと報道されている。同日の会議後、北朝鮮は文字通り中国の前衛になったわけだ。

中国と北朝鮮は脣亡歯寒(「唇亡びて歯寒し」=親しい仲の一方が滅びると他方も滅びるの意)の関係だ。北朝鮮は、米国の西太平洋・対中・前進軍事基地から中国本土を守る緩衝区域の役割を果たしている。北朝鮮が緩衝区域の役割から一歩進んで多様な戦略資産を備えた後、西太平洋地域の米国戦略資産と米同盟国を牽制・制圧する役割まで引き受けるならばどうなるだろうか。

中国としてはこれほどありがたいことはないだろう。台湾と有事の際、北朝鮮が韓米日の軍事的介入を抑制、遮断したり、米中衝突局面で北朝鮮が韓国・日本と西太平洋地域の米軍戦略資産を代わりに核攻撃するシナリオも考えられる。核戦力で劣勢の中国が米国に直接核攻撃を加えることは、文字通り滅亡につながる可能性が高い。核攻撃を北朝鮮内の一部強硬派の突発行動に仕立てた場合、北朝鮮地域に軍隊を送る口実まで得ることができる。こうした状況で中国が北朝鮮の核とミサイル開発・戦力強化を防ぐ理由はない。

北朝鮮は今年3月、多様なタイプのミサイルとドローンを発射した。いわゆる「核反接近_地域拒否(Anti-Access_Area Denial・A2_AD)」概念を披露したのだ。当時、北朝鮮は地下サイロから奇襲発射した戦術弾道ミサイルを800キロまで飛行させた後、800メートル上空で模擬核弾頭を爆発させる試験を行った。

この時、発射原点から東海(日本海)上の弾着点まで仮想の線を引き、この線をそのまま南側に回せば済州南東海域だ。北朝鮮がミサイルを発射した当時、同海域にはF35B戦闘機を積んだ米国「マーキンアイランド」強襲揚陸艦の戦団があった。当時、北朝鮮が発射したファサル‐1・2型巡航ミサイルと津波‐1・2型水中原子力自爆ドローンもやはり米国空母および上陸艦戦団を狙ったものだ。北朝鮮がこのような兵器を米空母戦団に正確に投射するためには、少なくとも1時間単位で位置を把握できる「目」が必要だ。その目がまさに北朝鮮が今回発射を試みた「万里鏡(マンリギョン)1号」だ。

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