欧米日そして台湾での「中国脅威論」の盛り上がりを恐れる中国
では、中国側の動機はどうなのでしょうか?
一つは、既述の「欧米日と和解した方が儲かる」という動機。もう一つは、台湾情勢がらみです。
来年1月に台湾で総統選挙がある。反中国で人気の高い蔡英文さんは、2期務めたので、もう出馬できない。中国は、この総統選挙で、親中国民党の候補を勝たせたい。そして、国民党総裁に住民投票を実施させ、平和裏に台湾統一を成し遂げたい。だから、欧米日そして台湾で中国脅威論が盛り上がらないよう、ある程度和解しておかなければならない。
日本が「戦わずして中国に勝つ」ためすべきこと
というわけで、米中が和解に動き出しています。これは、わが国日本にとってどうなのでしょうか?意外かもしれませんが、「極めてよい」といえるでしょう。なぜ?
私たちの恐怖は何でしょうか?
一番目は、中国が尖閣に侵攻してくることです。二番目は、中国が台湾に侵攻することです。すると、
- 日米 対 中国 の戦争
あるいは、
- 日米台 対 中国 の戦争
が勃発します。私たちが避けたいのは、この二つ。
アジアの情勢を見ると、中国が突出して強く、「バランスオブパワー」が崩れていました。バイデン政権は、
- クアッド
- AUKUS
- IPEF
- 民主主義サミット
- トランプ時代にバラバラになっていたNATOを再び一体化させた
- 日米関係を改善させた
- 米韓関係を改善させた
などによって、中国との「バランスオブパワー」を回復させたのです。つまり、中国が「動きづらい状況」を作り上げた。その上で現在、事情があって和解に動いています。そうなると、中国は、尖閣や台湾に侵攻しづらい状況のまま現状維持がつづいていく可能性が高くなります。
すると中国は、自動的に覇権国家になってしまうのでしょうか?そうはなりません。中国は、
- 国家ライフサイクルで成長期を過ぎ、低成長の成熟期に入っている
- 昨年から人口が減少しはじめた。長年の一人っ子政策の影響で、人口減少のスピードは加速していく
- 習近平は、中国に奇跡の成長をもたらしたトウ小平を軽蔑し、経済音痴の毛沢東を崇拝している
これらの理由で、中国に高成長時代は戻ってこないからです。
我々が「バランスオブパワー維持政策」を10年20年つづけ、成功すれば、「戦わずして中国に勝つ」ことが可能になります。私達の願いは、台湾侵攻、日中戦争、米中戦争に勝つことではなく、それらを起こさないことです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年6月21日号より一部抜粋)
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