マイナンバー保険証で支持率下落は不可避。焦る岸田が目論む“トカゲの尻尾切り” 

 

岸田政権の自滅につながりかねない「マイナ保険証」

ところが、河野大臣は違いをちゃんとわかっていた。7月2日のNHK番組で、こう語ったのだ。

「マイナンバー制度とマイナンバーカードは、同じ名前をつけたものだから、かなり世の中で混乱してしまっている」

「次にカードを更新する時には、マイナンバーカードという名前をやめた方がいいんじゃないかと、私は個人的に思っている」

マイナンバー制度とマイナンバーカードが別物であることを河野大臣もさすがに認識していた。にもかかわらず、わざわざ「マイナンバー制度は民主党政権が作った制度」と関係のない事実を持ち出すのは、かなりタチが悪いと言わざるを得ない。

さて、河野大臣のこの取り乱すさまを見て、つくづく思うのは、デジタル社会を進めるには、政府に対する国民の信頼が欠かせないということである。個人情報が筒抜けになることへの不安を払拭できないかぎり、マイナンバーカードを安心して使う気にはなれない。

北欧の小さな国エストニアがデジタル先進国になったのは、情報を包み隠さず国民に知らせる政府に信頼が寄せられているからだ。政府が作成した文書はWEB上で公開するよう法律で定められており、機密文書については、その理由を政府が開示しなければならない。

繰り返すようだが、国民の個人情報を収集するには、国の情報公開がきちんと行われる必要がある。そうでなくては、国民は不安で仕方がない。

国民に正確な情報を伝えないまま、無理やり、健康保険証を“人質”にとるやり方でカードの普及をはかろうとしているのが岸田政権であり、拙速なやり方で進める張本人が河野デジタル大臣である。「一回ちょっと立ち止まれ」と河野大臣に意見したのが誰かは知らないが、あたりまえのことだろう。

なにしろ、マイナ保険証のデータに他人の情報が登録されていたとか、公金受取口座に他人の口座が登録されていたとか、次から次へとトラブルが発覚しているのである。自治体や健康保険組合の職員の誤入力が原因らしく、岸田首相はマイナポータルで見ることができる29項目すべてのデータを総点検するよう指示をしているというが、それでこと足りるとは思えない。

ブロードバンドインフラが高い水準に達している日本だが、個々のデジタル技術には疑問がある。たとえば、マイナンバーカードを使った証明書交付サービスで別人の証明書が交付されるトラブル。これは富士通のシステムに何らかの欠陥があるからだろう。

デジタル社会に移行するには、異なる省庁が連携し、自治体や民間企業との協力を通じて、一元的なデジタルプラットフォームを構築する必要がある。日本では、各省がバラバラにIT投資、施策を進めてきたため、システムを統一するのが難しく、手続きの煩雑さ、情報の非効率性を生んでいる。

つまるところ、個人情報を守る技術が万全ではないにもかかわらず、性急にマイナカードの普及をめざしたために、トラブルが続出し、マイナカードへの不信感が膨らんでいるのが現状といえる。マイナカードを返納する動きも出ており、このまま保険証との一本化を強引に進めれば、すでに支持率が下降している岸田政権の自滅につながりかねない。

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