マイナンバー保険証で支持率下落は不可避。焦る岸田が目論む“トカゲの尻尾切り” 

Imabari,City,,Ehime,Prefecture,,Japan,,January,10,,2021:,Japan's,Light
 

マイナカード問題を巡り、来秋の現行保険証廃止を見直さない方針を改めて強調した岸田政権。マイナカードへの国民の不安は「高止まり」しているのが現状ですが、岸田首相はこの局面をどう切り抜ける算段を立てているのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、マイナカードと保険証の一体化が現段階では無理筋である理由を解説。さらに岸田首相が描く甘すぎる今後のシナリオを紹介しています。

健康保険証を“人質”に。マイナカード普及に焦る岸田の「次の目論見」

マイナンバーカードをめぐるトラブルが深刻化し、岸田政権を揺るがしている。

来年秋には今の健康保険証を廃止し、信頼感を失ったマイナンバーカードに一体化させるというから、なおさらコトは重大だ。

当メルマガでは今年4月13日号で、「マイナ保険証のリスクを心配する」と題する記事を掲載したが、まさかこんなに早く問題が顕在化するとは思ってもみなかった。

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いまのところ、トラブルのほとんどは入力ミスなど人為的なもので、システムに問題はないとされている。しかし、その見方は甘いような気がする。入力ミスはあらかじめ想定されたもので、それを前提にした安全システムを組み込んでいないこと自体、デジタル社会では致命的だ。

技術的に未熟なシロモノを全国民に保有させるために、健康保険証を廃止すると言い出した河野太郎デジタル大臣は、トラブル続きを責められて、苦し紛れの「逃げ口上」を考えついた。

6月25日に新潟県内で講演をしたさい、河野大臣はこう言い放ったという。

「マイナンバー制度は民主党政権が作った制度。作った時の人が『一回ちょっと立ち止まれ』みたいなことをいうと『お前が始めたんだろ』と言い返したくもなる」

おかしなことを言うものだ。確かに、マイナンバー制度の法案は2012年、民主党政権下の国会に法案が提出され、同年11月の衆院解散で廃案となったが、それを翌13年の国会に再度提出して成立させたのも、15年にマイナンバーカードを導入したのも、当時の安倍政権だった。

しかも、いま問題になっているのはマイナンバーカードであって、マイナンバー制度ではない。そもそも、マイナンバーとマイナンバーカード(マイナカード)は別物だ。

マイナンバーは、個人を番号で管理することにより、あらゆる収入を行政が把握するのが目的で、利用範囲を社会保障、税、災害対策に限定している。それ以外の利用は違法だ。

一方、マイナンバーカードは、氏名・住所・生年月日、電子証明書を記録したICチップを搭載し、そのデータの読み取りと暗証番号の入力により、本人であることを証明できる。こちらは利用制限はなく、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書などを取得でき、2021年10月からは、健康保険証としての利用が始まった。マイナポータルというサイトにアクセスすれば、公金受取口座の登録・変更、年金に関する情報確認や、ごく一部ながら行政手続きの電子申請をすることが可能だ。

つまり、マイナンバーカードは電子的な身分証明書である。それに様々な個人情報を紐付けることによって、デジタル行政を進めようとしているのだろう。

だから、主としてその紐付けにかかわるトラブルをめぐる話のなかで、河野大臣が、民主党政権時代に提案されたマイナンバー制度自体に問題があるかのごとき発言をしたというのは実に意外だった。最初は、マイナンバー制度とマイナンバーカードを混同しているのだろうか、と疑った。

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