個人情報の流出は必至か。不安しかない「マイナ保険証」をゴリ押しする政府の無責任

Imabari,City,,Ehime,Prefecture,,Japan,,January,10,,2021:,Japan's,Light
 

2024年秋にマイナンバーカードと完全一本化されるため、原則廃止となる方向で進む従来の健康保険証。マイナンバーカードを巡っては、2017年からの5年間で少なくとも3万5,000人分の情報が紛失・漏洩したとの報道もありますが、健康保険証の機能を乗せることにリスクはないのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、様々な面からその危険性を検討。さらにマイナポータル利用規約に記載されている驚くべき「免責事項」を白日の下に晒しています。

強引な誘導に疑問。ゴリ押し「マイナ保険証」のリスクを心配する

つい先日、かかりつけのクリニックを訪れたさい、見慣れぬ器械が受付に置いてあった。

マイナンバーカードを読み取って健康保険に加入しているかどうかの「オンライン資格確認」をするカードリーダーで、今年4月から原則として義務付けられているそうだ。

筆者はマイナンバーカードを持っていない。カードをどこかに置き忘れたり、紛失するのが怖いし、個人情報が漏洩したり、悪用される不安もあるからだ。

そんなわけで、この器械と自分は関係ないのだと思い、その時はたいして気にも留めなかったのだが、後日、健康保険証がとんでもないことになっているのに気づいた。

来年秋、健康保険証を原則として廃止し、マイナンバーカードに保険証の情報をデジタル的に紐づけた「マイナ保険証」に一本化するというのである。岸田政権はそのためのマイナンバー法など関連法改正案を今年3月7日に閣議決定し、今国会に提出している。

どうしてもマイナ保険証がいやだという人には、健保組合などが保険証の代わりとなる「資格確認書」を無料で発行することにはなっているが、有効期限が1年で、健康保険証のように自動更新ができないから、自分で1年ごとに更新の手続きをしなければならない。しかも、資格確認書を使用している限り、毎回の受診料がマイナ保険証より高いのだ。格差をつけて、マイナ保険証への切り替えに誘導しているわけである。

いつ、こんなことになったのか。たしか、マイナ保険証か、現行の健康保険証かは選択できるのではなかったのだろうか。そんな疑問から、この法案のもととなった昨年6月7日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」を確認すると、以下のような記述がある。

患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。

筆者の頭には「保険証発行の選択制」という文言が記憶されていたため、現在の健康保険証がそのまま残ると思っていたのである。よく読むと、「保険証の原則廃止を目指す」となっていた。

しかし、岸田首相はその後も、「マイナンバーカードを取得しない人でも保険料を払っていれば保険診療を受けられる制度を用意する」と国会で答弁していたのである。

その制度が「資格確認書」なのだろうが、受診料や手続きの違いを除くと実質的に健康保険証と変わらないとはいえ、正式の保険証ではないのも確かであり、やはり不安は拭えない。

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