個人情報の流出は必至か。不安しかない「マイナ保険証」をゴリ押しする政府の無責任

 

政府への信頼不足か。日本に電子行政が根づかなかった訳

そもそもマイナンバーカードを持つかどうかは「任意」であって「強制」ではない。それなのに、マイナンバーカードの健康保険証としての利用を強制するようなやり方には矛盾を感じる。

むろん、この国で遅まきながらもデジタル化社会をめざそうというなら、マイナンバーカードの利用拡大は必須であろう。だが、住基ネットに見られるように、これまで国民識別番号による電子行政が根づかなかったのは、政府への信頼が不足していたからではないか。

マイナンバーカードなら、大丈夫だというのだろうか。個人番号に紐づけされた健康保険の医療情報がハッキングされたり、漏出したり、悪用されたりする心配はないのだろうか。

マイナ保険証(オンライン資格確認)について、政府は「患者の医療情報を有効に活用して、安心・安全でより良い医療を提供していくための医療DXの基盤となるもの」としている。医療のデジタルトランスフォーメーションの基盤にしたいというのである。

経済産業省はDXをこのように定義づけている。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデル、組織、企業文化を変革し、競争上の優位性を確立すること」。要するにデジタルによる産業革命のようなものだ。

医療の業界についてもそれを進めようということなのだろう。具体的にどうしたいのかについては、先に示した「骨太方針2022」のマイナ保険証についての記述に続く次のくだりで明らかだ。

「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」及び「診療報酬改定DX」の取組を行政と関係業界が一丸となって進めるとともに、医療情報の利活用について法制上の措置等を講ずる。

全国医療情報プラットフォームは、日本の医療分野における情報のあり方を抜本的に改革するためにと、2022年5月に自由民主党が提言した。中身は次のようなことだ。

「オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療(介護を含む)全般にわたる情報について共有する全国的なプラットフォームのこと」(日経メディカル)

つまり、マイナ保険証のシステムは、クラウド型電子カルテを標準化し、その医療情報を行政や医療界、産業界が共有し、利用・活用することまでめざしているのだ。

デジタル世界では、毎日のように不正アクセスなどによる情報漏洩事件が発生している。個人の医療情報が広く共有されるということになると、それだけ流出の危険性は高まるだろう。

当然、患者の個人情報の秘匿の観点から、マイナ保険証に反対する医師も数多い。

東京保険医協会の呼びかけで、保険医・歯科保険医274人が今年2月、オンライン資格確認義務化の違憲・違法性を訴えて、国を相手に東京地裁に提訴したのはその顕著な例だ。

「オンライン資格確認システムを利用しインターネット回線に接続することにより、カルテ情報等の漏洩の危険が生じている」というのが、提訴の理由らしい。

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