しかし、この3000万円以下免税の制度は、平成16(2004)年に大幅に縮小され、免税となるのは「売上1000万円以下の事業者」となりました。これにより、かなり多くの中小事業者やフリーランサーが、免税を解かれてしまいました。消費税を免除されるのは売上が1千万円以下の零細事業者だけになったのです。
ところが、です。令和5年のインボイス制度によって、「売上1千万円以下免税」の制度も骨抜きにされてしまったのです。これにより、売上がどれだけ少なくても、事業所得があれば事実上、消費税の納税義務が生じることになったのです(一部の小売業者、飲食店などを除いて)。
しかもインボイス制度で打撃を受けるのは、零細事業者やフリーランサーだけではありません。すべての取引にインボイス(適格請求書)というものを発行しなくてはなったので、事務量が膨大に膨れ上がったのです。零細事業者やフリーランサーなどは、この事務をこなすだけでも大きな負担であり、実際には事務をこなせない事業者も大量に発生すると思われます。この事務負担に耐え切れないので、廃業するというフリーランサーもかなりいます。
また、大企業などにとっても、インボイスに関する事務の増加は、とてつもない負担になるはずです。つまりはインボイス制度というのは、零細事業者やフリーランサーへの実質的な大増税であるとともに、日本経済すべてに対して多大な労務を課すものなのです。日本経済全体の負担増は、膨大なものになるのです。
にもかかわらず、インボイス制度によって増える税収というのは、たった2000億円程度なのです。日本の国家予算の0.2%にも及ばない程度なのです。2000億円程度の税収を増やすために、日本経済全体に多大な負担を押し付けようということなのです。まさに「百害あって一利なし」なのです。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2023年8月1日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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