声優やフリーランスが「インボイスに反対」する明確な理由。会社員にも事務負担で「百害あって一利なし」

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声優や俳優、漫画家やライターなど多くのフリーランサーたちが反対の声を上げてもスルーされ続け、10月に始まるインボイス制度。サラリーマンへの増税の可能性が浮上するとすぐに反応するメディアも、ほとんど取り上げなかったこの制度の問題点はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、元国税調査官で作家の大村さんは、少ない収入がさらに減るのに加え、事務作業の負担が大きく廃業に追い込まれる人がいると解説。その事務負担は、経理はもちろん経費を精算するすべての会社員にも及び、たかだか2000億円程度の税の増収のために膨大な時間を奪うと指摘しています。

声優業界がインボイスに反対する理由

去る6月22日、アニメプロデューサーの植田益朗氏や声優の岡本麻弥氏らが外国特派員協会で、インボイス制度に反対する記者会見をしました。岡本氏は、自身の廃業も考えているとして涙ながらに訴える場面もありました。

声優業界に限らず、フリーランスで働く人の多くはインボイスに強く反対しています。が、一般の人にはなかなか、なぜ彼らがインボイス制度に反対するのか、わかりにくいところだと思われます。それを今回は説明したいと思います。

消費税というものは、消費者にとっても痛いものですが、事業者にとっても痛いものです。特に中小以下の事業者やフリーランサーにとっては、消費税は大きな痛手となる税金なのです。

消費税は、建前の上では、事業者が売上時に消費税を客から預かり、それを税務署に納付するだけということになっています。そして消費税は、その税金分を価格に転嫁するという建前になっています。が、場合によってはそれができない場合も多いのです。中小企業の場合は特にそうです。

たとえば、声優などの場合、出演料は自分で決めることはできません。制作会社などが決めます。そして出演料は消費税込みの金額になっています。消費税が上がったからと言って、出演料を上げてくれとはなかなか言えません。しかし声優も、事業者ですから、売上(報酬)に応じて消費税を納付しなくてはなりません。

声優の出演料には、消費税が含まれて払われているという建前なので、声優は出演料の中から消費税分を取り出して税務署に納付しなくてはならないのです。しかし実際には、出演料には消費税分は加算されていないので、自腹を切って消費税を納付することになるのです。声優だけではなく、俳優やフリーランサーなどは、自分の報酬に消費税を上乗せすることができないことが多いのです。そういう人たちは、みな自腹を切って消費税を納付することになるのです。

消費税が中小企業やフリーランサーに痛手であることは、国の側も認識していました。だから消費税導入時には、売上が3000万円以下の事業者は、消費税の納税が免除されていたのです。この売上というのは、所得や利益のことではありません。事業者は売上から経費を差し引いた残りが、利益(所得)となります。だから売上3000万円と言っても、経費を差し引いた後の所得はそう大したことはありません。実収入は数百万円であることがほとんどなのです。

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