もはや四面楚歌。木原誠二副長官の「不審死事件」説明会見を不可避にする“元刑事の重大証言”

 

レジェンド刑事の心に火をつけた警察庁長官の「大嘘」

問題は、その記者会見の中身であろう。週刊文春が毎週連続して、この国の政権中枢にかかわる事件を報じているのだ。一般市民としては、それが真実かどうかを知る権利がある。木原副長官や警察から説明がない以上、亡くなった安田種雄さんの遺族や、当時の捜査員の記者会見に関心を寄せるのは当然のことだ。

とくに佐藤氏の場合は、退職後も守秘義務を科す地方公務員法に抵触するおそれがあるにもかかわらず、勇気をふりしぼってメディアの前に出てきたのだ。

かつてレジェンド刑事といわれたその人は、なぜ週刊文春の取材に応じ、記者会見にのぞむことになったかについて、こう語った。

「警察庁長官の会見、事件性がないと、自殺だと。それでカチンときたんですよ」

警察庁の露木康浩長官が「警視庁において捜査等の結果、証拠上、事件性が認められない旨を明らかにしております」と述べたことが、佐藤氏の心に火をつけた。

「被害者がかわいそうだなと思ったんですよ。警察退職したらね、何でもかんでも話していいのかと思う人もいるかも知らないけど、ここで言うしかねえなと」

2018年の再捜査で中心的役割を担った佐藤氏が証言したのは真っ向から警察見解に反論する内容だった。

「断言します。あれは事件なんですよ。出てくるのは怪しい証拠品ばかりで、自殺だと言える証拠品は見たことないです」

簡単におさらいしておくと、事件は2006年4月10日未明に発覚した。木原官房副長官の妻、X子さんの元夫、安田種雄さんが自宅で血まみれになって亡くなっていた。体内から覚せい剤が検出され、当初は自殺とみられたが、喉から肺にかけて深い刺し傷があり、ナイフが足元にきちんと置かれているなど、自殺としては不可解な点があった。

12年後の2018年になって警視庁大塚署の女性刑事が、ナイフの柄がきれいだったことに着目、「誰かが血糊を拭き取ったのでは」と疑念を抱いた。そこで再捜査がはじまったが、木原氏の自宅への家宅捜索、Xさんへの事情聴取と捜査が佳境にさしかかった段階で、突然、打ち切られた。これが出来事の概要だ。

再捜査は、大塚署から警視庁捜査一課の特命捜査第一係、通称「トクイチ」に持ち込まれた。しかし、ほどなくしてX子さんが木原氏と再婚していることが判明したため、政治がらみの案件として、エース級ぞろいの殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」までもが投入され、大がかりな布陣となった。

佐藤氏は「サツイチ」の一員として捜査に加わり、X子さんへの事情聴取を受け持った。

「トクイチ十数人、サツイチ十数人、大塚署を含めて3、40人態勢だろ。これは特捜(特別捜査本部)並みの人数だよ。サツイチが入り、『やっぱり事件ではありませんでした』なんていう話は、俺が捜査一課にいた18年間で一度もないよな。だから露木長官の『事件性が認められないと警視庁が明らかにしている』というのは明らかに大嘘なんだよ」(週刊文春8月3日号)

佐藤氏は個人的な見立てだと断ったうえで、概ね次のような話をした。

取調室での質問に対し、X子さんは作り話をしていた。実行犯はX子さんではないと、佐藤氏は考えていた。女性にできる犯行とは思えなかったからだ。X子さんから連絡を受けて現場に駆けつけたY氏でもないと判断した。種雄さんの死亡推定時刻は4月9日午後10時ごろ。Y氏が到着したのは午前零時ごろだったことがNシステムなどで分かっている。

佐藤氏は文春の記事のなかで、Z氏をあげ「俺はホシだと思っている。彼は、X子が絶対に庇わなければいけない存在。Z氏は突発的に殺害した末、自殺偽装計画を立てたわけだ」と述べている。

つまり、事件が起きたとき、現場にはX子さん、Z氏、種雄さんがいて、実際に種雄さんに手を下したのはZ氏だったという見立てなのだろう。

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