数カ月後には孤立し戦争の継続が困難になるウクライナ
さまざまな混乱があるものの、経済的にも軍事的にも、ウクライナに比べてキャパシティーが上回るロシアが態勢の立て直しをほぼ済ませ、対ウクライナαの攻撃を強化・アップグレードすると言われている中、戦争の長期化は必然的と思われることから、問題はいつまで支援国政府の政治が持つかということかと思われます。
戦争の継続によって確かに軍需産業はブームを迎え、収益を爆発的に増加させてきていますが、それも各国政府がそれらの武器弾薬をほぼ言い値で調達してくれているという現実があるためで(つまり、ウクライナ政府による購入ではない)、その各国政府がこれ以上の軍事支援を躊躇う方向に進むことで、軍需産業における特需もそろそろ終焉するのではないかと予測されており、“戦争の継続を後押しする”勢力が次第に弱まってきているのが、報じられない現実です。
それが事実なら、ウクライナは恐らく今年末から来年頭には孤立し、戦争の継続が困難な状況に追い込まれますが、この“戦うだけ戦わせて、都合が悪くなったらすぐさま切り捨てる”様子は、非欧米諸国の反欧米傾向を一気に加速させることに繋がっています。
その顕著な例が、インドが主導するグローバルサウスの反欧米での結束と中ロとの親交という形で現れ、BRICsの結束の強化とメンバーシップの拡大という動きに発展していると思われます。
これらの国々は、ロシアが力による侵略と現状変更を試みたことには、一同反対または懸念を表しており、支持はしていませんが、一方的にロシアの息の根を止めようとする欧米諸国とその仲間たちが行う対ロ制裁に対し、賛同を拒むだけでなく、「いずれは自分たちがそのターゲットになりかねない」という恐れと、欧米諸国とその仲間たちが示すご都合主義への強い反発から、一気に世界の分断が進んでいます。
中ロが主導する国家資本主義が各国に受けいれられるかどうかは未知数ですし、国ごとに温度差はありますが、民主主義や人権を盾に内政干渉してくる欧米諸国とは異なり、内政不干渉を徹底する中ロ陣営への“緩い”シンパシーは強まっているように見えます。
中長期(大体25年間が軸)の経済協力と戦略的パートナーシップ、それぞれの国の強みを活かした発展モデルと相互支援体制の構築、それぞれの政体・政治形態の尊重などを“確約”するBRICs、グローバルサウスは、ロシア・ウクライナ戦争が泥沼化する背後で、勢力と影響力を拡大しつつあります。
「もしかしてアメリカは覇権主義を放棄するのではないか」との分析と並行して、アメリカの非近隣諸国へのコミットメントの低下が進み、各地域における勢力の構築が進んでいるように見えますが、その背後にいるのが、中ロであり、グローバルサウスの面々です。
アメリカ政府については、中国が存在するアジア・太平洋地域においては、まだ覇権的な影響力を維持したいとの思惑があり、クワッドやAUKUSの強化、その他の経済的フォーラム(ASEAN+3やAPEC)へのコミットメントを維持していますが、「これ以上、アメリカのご都合主義に振り回されてはならない」と確信する国々(インドネシア、インド、マレーシア、フィリピンなど)が力を拡大するにつれ、そう遠くないうちにアメリカの覇権的な立ち位置は、中国の経済・軍事的な影響力の拡大と並行して、急速に弱まり、もしかしたら“アジアも失う”という事態に発展する危険性を示しています。
我が国日本はアメリカを唯一の同盟国と位置づけ、対米関係を日本外交の軸に据えていますが、仮にアメリカがアジアを失った暁には、どのような立ち位置を取るのか、しっかりと戦略を立てておく必要があるように考えます。
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