中国だけじゃない。英国もドイツも原発処理水を「汚染水」と報じている現実

 

「汚染水」と表記する欧米諸国には抗議せぬ岸田首相

ま、それはそれとして、「処理水」を「汚染水」と言っているのは、本当に中国だけなのでしょうか?…というわけで、まずは大まかな流れを説明しますが、ずっと「汚染水」と呼ばれていたものが、突然「処理水」という呼び名に変更されたのは、菅義偉政権下の2021年4月でした。海洋放出を強行決定した菅義偉首相は、「汚染水」という呼び名のままでは海洋放出の実現への足かせになると判断し、今後は「処理水」という呼び名に統一するようにと、記者クラブを使ってメディアに指示したのです。

これを受けたNHKは、国内報道はそれまでの「放射能汚染水」を「処理水」に、国際報道はそれまでの「radioactive water(放射能汚染水)」を「treated water(処理水)」に、それぞれ変更しました。民放各局、新聞各紙も同様でした。

また、就任直後のジョー・バイデン米大統領も、日本政府の方針に理解を示しました。そして、アメリカのメディアもそれに忖度する形で、CNNニュースやニューヨークタイムズ紙などは「treated water(処理水)」や「treated radioactive water(処理された放射能汚染水)」という表現を使うようになりました。ワシントンポスト紙は、汚染されているかどうかを限定しない「Fukushima nuclear plant water(福島原発水)」という中立的な表現を用いるようになりました。

しかし、アメリカのメディアも、すべてが右へ倣えというわけではありません。シアトルタイムズ紙は、それまでと同じく「radioactive wastewater(放射能汚染水)」という表現を使い続けただけでなく、日本の海洋放出を批判する記事を掲載しました。これは、シアトルタイムズ紙が中央の影響を受けない独立系のローカル紙だからで、同様の論調のローカル紙は複数あります。

イギリスでも、BBCニュース、ロイター通信、ガーディアン紙を始め、ほとんどのメディアがそれまで通りに「contaminated water(汚染水)」という表現を使い続けています。一例を挙げますが、今回、日本が8月24日に海洋放出を始めた3日後の8月27日付のロイター通信の「Japan says seawater radioactivity below limits near Fukushima(福島の海水の放射能は基準値を下回っていると日本が発表)」という記事の中では、次のように書かれています。

Tepco is storing about 1.3 million tonnes of the contaminated water, enough to fill 500 Olympic-sized swimming pools, in tanks on the site.

 

(東京電力は、オリンピックサイズのプール500個分を満たすのに十分な約130万トンもの汚染水を敷地内のタンクに保管している)

記事自体は、「東電はトリチウム以外の放射性物質は含まれていないと説明している」「トリチウムも環境や人体に影響のないレベルまで希釈されていると説明している」など、日本の報道と同様の内容ですが、タンクに貯蔵されている水に関しては、これまで通りに「contaminated water(汚染水)」なのです。

また、脱原発を達成したドイツのドイツ通信社の記事では、「radioactive water(放射能汚染水)」と、さらに踏み込んだ表現を使っています。岸田首相は、「汚染水」と言っただけの野村大臣にマッハで謝罪・撤回させたのですから、こうしたイギリスやドイツのメディアにも抗議すべきなのでは?…なんて思ってしまいました。

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