中国だけじゃない。英国もドイツも原発処理水を「汚染水」と報じている現実

 

国民のナショナリズムを煽る作戦に出た岸田政権

ま、そもそもの話、岸田首相は福島漁連との6年前の「関係者の理解なしに、いかなる処分も行なわない」という政府の約束を反故にし、地元への丁寧な説明もないままに海洋放出を強行したのですから、本来なら国民の怒りは岸田政権へ向くところでした。しかし、中国が「日本の水産物の全面輸入禁止」という過剰反応に出て、この問題を政治利用し始めたので、岸田首相は「渡りに船」とばかりに、これに便乗したわけです。

中国の国営メディア、新華社通信は、通常運転でも「contaminated water(汚染水)」、ここ一番の日本叩きの記事では「nuclear-contaminated water(核汚染水)」「contaminated radioactive wastewater(汚染された放射能廃水)」「contaminated Fukushima water(汚染された福島の水)」など、どこの国のメディアよりも厳しい表現を使っています。

そこで岸田首相は、中国の一挙手一投足をいちいち日本のメディアに大きく報じさせ、オマケに「中国の原発排水のほうが日本よりトリチウムが高い」と報じさせることで、国民のナショナリズムを煽る作戦に出たのです。安倍政権から続く警察官僚の入れ知恵だと思いますが、こんな幼稚な作戦でも、脳みその回路が直列つなぎの一部の国民は、「悪いのは中国だ!」「日本が海洋放出しているのは安全な処理水だ!」と思い込んでしまうのです。

しかし、実際に世界各国の報道を見てみると、日本と同じように「treated water(処理水)」などと表現しているのはアメリカの一部のメディアくらいで、多くの国のメディアは「contaminated water(汚染水)」や「radioactive water/radioactive wastewater(放射能汚染水)」という表現を使っているのです。また、日本に対して批判的な記事を書いているのも、中国だけではありません。

たとえば、今も「radioactive wastewater(放射能汚染水)」という表現を使っているアメリカのシアトルタイムズ紙は、「福島の地域住民の9割が海洋放水による漁業への悪影響を懸念し、放出に反対している」と明記して、岸田政権が地元住民の理解を得ずに放出を強硬したと書いています。

また、イギリスのガーディアン紙も、環境保護団体「グリーンピース・イーストアジア」の専門家の発言として、「もしも福島第1原発のタンクの貯蔵水が放射能汚染されていないと言うのなら、東京電力は同国の原子力規制委員会に海洋放水の許可を得る必要などなかったはず。タンクの貯蔵水は『アルプスで処理したが放射性物質を除去できなかった水』である。日本政府は『処理水』という言葉で国内外を欺こうとしている。」という指摘を掲載しました。

これが世界の現状なのですから、岸田首相は「中国だけが日本を批判している」という卑怯な印象操作で保身に走らず、自分の非を認めるべきだと思います。そして、ここまで言われても「汚染水でなく処理水だ」と言い張るのなら、「contaminated water(汚染水)」や「radioactive wastewater(放射能汚染水)」という表現で福島の海洋放水を報じている世界各国のメディアすべてに抗議して、野村大臣と同じように謝罪と撤回を要求してほしいと思います。

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