「台湾有事は日本有事」の大ウソ。危機を煽る『週刊現代』総力特集の支離滅裂

 

中国側にない今すぐ台湾に進攻しなければならない理由

本誌が繰り返し分析してきたように、中国は1950年代以来一貫して、

(1)台湾問題は「国内問題」であり、

(2)平和的に統一することが出来ればそれに越したことはないけれども、

(3)しかし、仮にも台湾側が「独立」を宣言するようなことがあれば、それは神聖なる領土の欠損となる深刻な事態であるので、武力を用いてでも断固阻止する。

――という姿勢をとっていて、今もそれは何ら変わりがない。

その姿勢に重大な転換が生じ、中国の一方的な台湾侵攻が「目と鼻の先まで迫っている」と主張するのであれば、その根拠を明らかにすべきである。それを抜きに、まるでそれが天下周知の万人に認められた状況認識であるかに言うのは、憶測に基づく悪意ある扇動、すなわちデマゴギーである。もし『週刊現代』が、これをデマゴギーだとまで言われるのは心外だと思うのであれば、なぜ今、中国の台湾侵攻が「目と鼻の先まで迫っている」とまで断言するのか、その根拠を具体的に示して私との議論に応じて頂きたい。

中国側には今すぐ台湾に進攻しなければならない理由は、ないと、私は確信する。

他方、台湾側では、民進党政権も含めて現在の状態が「事実上の独立状態」であり、外交面では世界の多くの国々と国交を結べないなどの不便はあるものの、経済面では大陸中国との深々とした相互依存関係も含めて実質的な利益を得ていることに、満足はしていないが、まあ次善の選択だろうかとは思っている。それを投げ捨てて、今さら名目的な「独立」を宣言してわざわざ中国の武力介入を呼び寄せるなど何の意味もないことだということについて、台湾8割以上の人々の間に合意があるのであって、だから台湾有事は起こらない。

もちろん絶無ではなく、最も懸念されるのは現場での接触事故をきっかけとした偶発的な戦闘が引き金になることであるけれども、それをこそ絶対に回避しなければならないことについては各国軍部の間には明示的もしくは暗黙的な共通理解があるので、これまた極めて起こりにくい。

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