中国とロシアへ有利に傾く可能性大の世界情勢
このファイブ・アイズについては、イギリスなどから日本の参加を期待する声も出ています。しかし、日本にはスパイ防止法も、情報機関もありません。これらを整備しなければ、ファイブ・アイズに入ることは不可能です。機密情報も敵国に簡単に漏れてしまう状態です。
しかし、上記の状況からしても、スパイ防止法の制定は喫緊の課題のはずです。
加えて、現在の中東情勢が世界を大きく変える可能性があります。このファイブ・アイズ・サミットでも、イスラエルがパレスチナのイスラム過激派組織ハマスに攻撃されて以来、中東の安全保障情勢が高まっているという懸念も表明されました。
マッカラム氏はMI5は英国内の情勢を注視しており、宗教的あるいは民族的過激派によるテロ攻撃の可能性に警戒を強めているとし、中東での事件は、個人または組織を「鼓舞」し、おそらく過去とは異なる方法で攻撃を実行させる可能性があると述べました。
さらに、イランが不安定な中東情勢にさらに火を注ぐ可能性もあります。マッカラム氏によれば、過去12ヶ月ほどの間に、MI5は反体制派やジャーナリストの殺害・誘拐未遂を含め、イラン関連の公式攻撃を15件防ぐことに成功したといいます。
こうした中東危機を受け、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、イスラエルとパレスチナの過激派組織ハマスの対立の結果、米軍が遠ざかろうとしていた中東に戻ったことで、ワシントンのインド太平洋地域への注力が弱まる恐れがあり、世界情勢は中国とロシアに有利に傾く可能性があると報じました。
2021年、アメリカ・バイデン政権はアフガニスタンから米軍を撤退させ、中東におけるアメリカのプレゼンスを縮小しました。その一方で、中国とロシアからの潜在的脅威に注力してきたわけです。
しかしバイデン政権が軍隊と戦力を中東に再配置せざるをえなくなることで、中東に焦点を当てる以前の政策に回帰しなくてはならなくなる恐れがあります。
中東での紛争が、インド太平洋を封じ込めようとしてきた米国の長年の努力と、北大西洋条約機構(NATO)によるロシアへの抑止効果を覆す恐れがあると、WSJ紙は報じています。
フランク・マッケンジー元中央軍司令官は、ハマスに財政的・軍事的支援を提供しているイランは米国の行動を注視していると指摘、米軍が中東でのプレゼンスを低下させ、アジア太平洋にのみ焦点を絞ることを明らかにすれば、米国は中東地域の同盟国を安心させることができず、同地域の潜在的な敵対勢力の自信を助長することになると警告しています。
また、フィンランド元首相のスタッブ氏も、イスラエルとハマスの紛争は世界のパワーバランスに影響を及ぼし、ヨーロッパやアメリカの資源を限界まで引き伸ばすことになり、これら西側の体制を覆したい国々を利する可能性があると述べています。
とりわけ、中国、ロシア、イランのような、長い間、アメリカ主導の国際システムを弱体化させようとしてきた国が、アメリカが中東での戦争に気を取られている間に、チャンスを掴もうとしており、これは世界秩序の再編成の一環だとスタッブ氏は強調しました。
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