イスラエル政府関係者が口にした激しい言葉
イスラエル軍による病院への攻撃と増え続ける子供の死者数、そして最近になってエネルギー不足のため乳幼児が死亡したという情報は、確実に国際世論をイスラエルから離し、イスラエルを国際社会において孤立させる方向に進んでいます。
現時点でイスラエルに影響力を持つのは、アメリカ政府ですが、その他には経済的なつながりで戦略的パートナシップを結ぶ中国政府と、ネタニエフ首相と個人的な実利主義から親交を持つロシアのプーチン大統領ですが、現在、そのどれもこの問題に対して深入りしようとしないため、今のところ、効果的な解決に貢献できない状態です。
ロシアはウクライナで手いっぱいですし、中国は自国内の立て直しとアジアでの勢力拡大で手いっぱい、そしてアメリカは久々に多正面外交と軍事対応を行っているため、イスラエルには加担するものの、ウクライナ対応に苦慮することと、中国へのにらみ、そしてアラブ諸国との関係改善に手いっぱいなのに加え、来年の大統領選に向けた国内政治に忙殺されているため、効果的な動きはできません。特にアメリカは明らかにイスラエル寄りであることが今回もはっきりしたため、仲介役には絶対に向きませんし、仲介などしないほうが得策かと考えます。
誰もイスラエルを止めることは出来ず、日々増え続ける死者数とガザの破壊の現状を前にして立ち尽くすことしかできていません。政治的な言葉の応酬は国連安保理でも行われ、また各地域でも行われているものの、イスラエル・ハマス双方を止めることにはまったく貢献できていません。
このメルマガを書いている最中に「人質解放のための協議が空中分解した」との報が入ってきました。人道支援のための一時的な戦闘停止も実現せず、ましてや3日間の停戦も合意できないようで、それが人質解放にはつながらないことになってしまっています。
ハマスとイスラエル双方が人質交換に応じる形になれば、少しは事態が快方に向かうと思われますが、その機運はまだ実現の見通しが立たない状況だと言えます。
いろいろな調停者や国、機関が何とか解決の糸口を探ろうと奔走していますが、“答え”はなかなか見えてきません。
イスラエル政府の友人が語った内容が印象的だったので紹介します。
「今回のハマスによるイスラエルに対する奇襲攻撃は、正直、寝耳に水で、イスラエル社会、特にインテリジェンスにとっては大きなショックであり、汚点になった。今回の奇襲攻撃は平和に慣れていたイスラエル政府と国民にとってwake up callとなり、同時に独立以降、しばらくアラブ諸国から同時に攻撃を受けた過去を再び思い出させた。私たちは長年の流浪と苦難の末、やっと神が与えた地に戻り、国家を築くに至った。それを失うことはできない。我々の存在に挑戦する者は何人とも許されず、我々からの徹底的な攻撃に遭うことになる。我々の苦しみと長年の思いは、恐らく誰にも理解できないだろうから、我々が誰かの言いなりになることは決してない」
今回、調停努力を行うにあたり、直面した親しい友人からの覚悟と激しい言葉ですが、私はここにイスラエルの覚悟が見える気がしてなりません。
世界はロシアによるウクライナへの侵攻で分裂が鮮明になり、その後、国際社会は問題解決のための協調の精神を失ったように思われます。その結果、世界のいたるところで争いの種が芽を出し、そのまま戦いへと発展しています。そして火は、もしかしたら世界で最も危険な地域に広がってしまったのかもしれません。
以上、今週の国際情勢の裏側でした。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
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