小池百合子の名前まで浮上。岸田文雄の次に総理大臣の座に就く人物

 

見事なほどに政策のマトリックスが見えない日本

こうした状況と比較しますと、日本の場合は「見事なほどに政策のマトリックスが見えない」ことになっています。また、政策の違いがあっても可視化できない形で政策が動いてゆくという面があるようです。

例えばですが、安倍晋三氏亡き後の「保守派」というのが、自民党を割る動きにもなるかもしれないとか、いやいや清和会などを通じて影響力を維持するとか、派閥横断で勉強会がどうとか注目されているわけです。では、彼らは具体的な憲法改正案を持っているのかというと、国軍設置か9条加憲なのかハッキリしません。例えば東シナ海政策でも、大局的にどんな抑止プランがあるのか不明です。

個別の問題、例えば東シナ海のブイ問題とか、トランスジェンダーの問題など個々の問題が出てくると右から盛大に色々と繰り出してくるわけですが、それならヤフコメと変わりません。一貫した政策がないとか、中長期展望がないということでは、岸田政権とは変わらないのです。

左派も同様です。共産にしても、立憲にしても、例えば処理水には反対する、辺野古には反対する、などまるでデパ地下の「プラ食器の試食」のようなもので、味見程度の話で、食べたらポイというレベルであるわけです。例えば脱原発の経済成長というシナリオ、沖縄の非武装化による台湾海峡の安定と尖閣の保全といったシナリオを彼らが持っているのかというと、全く無いわけです。

例えばですが、直近の問題、それも重要な問題について考えてみても、円安問題、中東情勢、ライドシェア、AIなどについて、野党が「具体的な政策」を持っているのかというと全く怪しいのです。共産党などはライドシェアに反対ですが、「バス、タクシー輸送力の維持」についてシナリオを持っているわけではありません。とにかく味が漠然と和風とか中華ということを「試食」する程度の政治と言えます。

似たような問題としては、維新とか都民ファのような「都市型の小さな政府論」政党の問題があります。この2つのグループ(プラス旧みんなの党)というのは、要するに都市の納税者の反乱に過ぎないわけで、納税額のリターンがないことへの怒りが原動力になっています。

ただ、この2つのグループには共通の根本的な欠陥があります。

1つは「小さな政府というコストカット戦略」はあっても「民間活力による成長戦略」はないということです。どちらも「ある」と強弁していますが、実際はありません。そして維新は現時点では万博企画の行き詰まりという問題を抱えています。また都民ファはコロナ禍におけるバラマキ政策で一気に都財政を悪化させて将来の高齢単身世帯群を支える資金を喪失したという大罪を抱えています。つまり偉そうに自民を批判していたくせに、経済という点で大失点を抱えているのです。

2つ目は、これは党派の成り立ちからくる欠陥ですが、地方政策がないことです。現在の日本の各地方は、道州制による県庁リストラ効果などでは埋めることのできないマイナスを背負いつつあります。これは観光収入などでもチャラにはできません。人口の分散をどう集約するのか、過剰な交通インフラを持続可能な姿に「まとめ」つつ交通や流通、あるいや防災や除雪を支える人材をどう確保するという「サバイバルの段階」に入っています。

維新や都民ファといった都市政党はあくまで地方を無視するのか、あるいは積極的に税金の地方還流を止めて地方を追い詰めて改革へと向かわせるのか、それとも全国政党を目指して、突然地方にバラマキをするのか、良くわからないのです。

つまり、2つ目の地方行政に解答をもっていないが故に都市政党にとどまり、その一方で、リストラ政党だけではネガティブなので、大阪では万博、東京ではコロナ禍のバラマキをやって、どっちも「統治能力の欠陥」をさらけ出しているわけです。ちなみに、国民民主というのは、表面的には民主党分裂の際の受け皿と、希望の党の失敗の受け皿に見えますが、本質は旧同盟系の票の受け皿という特殊な政党です。この際、民社党とでも名乗ったほうが正直かもしれません。

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