萩生田政調会長の“舎弟”が手にしたパー券の売上金額
11月30日の文春オンラインの記事には、安倍派の“パー券営業部長”と異名をとる池田佳隆元文科副大臣がいかにモーレツな“営業マン”であるかが紹介されている。
池田氏は「誇り高き国 日本─この国に生まれて本当に良かった」という愛国主義的な著作を出版した当選4回の政治家で、萩生田政調会長とは、その“舎弟”といわれるほど近い間柄らしい。萩生田氏が派閥パーティーを前に、チケット購入者に感謝するために開く茶話会では、毎年のように司会をつとめている。
安倍派の収支報告書には、20万円を超えるパー券の購入者として、毎年数十社の企業名が記載されているが、そのうち3割以上が池田氏個人のパー券を購入してきた愛知県内の支援企業なのだという。多いときは1,000万円以上の“売上”があったとみられ、むろん、「50万円~100万円」とされるノルマをはるかに上まわる。かりにこれほど多額のノルマ超過分が裏金になっていたとすれば由々しきことだ。文春の取材に対し、池田氏の事務所は「事実関係を確認し、適切に対応して参ります」とだけ答えているという。
メディア各社の報道を総合すると、安倍派所属の数十人の議員がパーティー券収入の一部を裏金化していた疑いがある。国会議員として世界一の高禄を食みながら、実にあさましいかぎりだが、要は飲み食い遊興など自由に使えるカネが欲しいのだろう。
収支報告書の不記載、虚偽記載罪の時効にかからない2018年~22年の5年分の安倍派のパーティー収入は、計約6億6,000万円と収支報告書に記載されているが、このうち裏金化されたカネは1億円を超えるとみられている。
また、二階派(志帥会)でも、パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を収支報告書の収入に記載しない運用をしていた疑いがあると報じられている。不記載の総額は安倍派と同様、直近5年間で1億円を超えるようだ。
政治資金パーティーは、1999年の政治資金規正法改正で、資金管理団体に対する企業の寄附が禁止されたのがきっかけで、政治資金調達の手段として重宝されるようになった。それまでは、派閥のボスがカネを集めて所属議員に配り、派内の結束を高めるというやり方が主流だった。だがそのために、金権政治がはびこり、政界のタニマチとの裏の関係が深まった。
闇のカネの流れを断つのが、政治資金規正法を改正する目的だったはずだが、代わりに政治資金パーティーが裏金作りの抜け道になってきたわけである。
今回の問題は、自民党の5派閥が18~21年分の収支報告書にパーティー券収入を計約4,000万円少なく記載したなどとして大学教授が会計責任者を東京地検に告発し、特捜部が捜査に着手したのがきっかけとなって発覚した。
政治資金規正法は1回のパーティーにつき、20万円を超える購入者の氏名や金額を収支報告書に記載するよう義務付けているが、各派閥ともに20万円超の購入者の不記載があまりにも多く、4年間で合わせて4,000万円におよんでいた。
当初、岸田首相は「複数の議員が同じ団体に券購入を依頼し、結果として合計が20万円を超えたケースがあった」と、あたかも集計ミスであるかのごとく弁解していた。しかし、新たに判明した1億円を超える裏金作りについては、そのたぐいの言い訳は通用しない。派閥は収入をごまかし、議員はパーティー代金の一部を自分のフトコロにしまいこんでいたのである。
政治資金規制法に違反しているのはもちろん、れっきとした脱税行為だ。それを知りながら、慣習的に組織ぐるみで行われてきた疑いが強い。当然、派閥のトップなり事務総長はこの仕組みを知っているはずだ。
実際、安倍派の座長、塩谷立衆院議員はパーティー券収入のキックバックについて「そういう話があったことはあったと思う」と一度は認めている。その5時間後に記者団の前に姿をあらわし「一切撤回したい」と手のひらを返したが、メディアの反応をみてコトの重大さに気づいたからだろう。
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