党内6派閥中5番目の規模にまで“落ちぶれた”二階派
二階派が、他派閥や野党から引き抜きができたのも、義理人情に厚い親分がカネとポストの面倒をみてくれるというイメージがつくられたからだった。だが、ピーク時(20年10月)に48人をかぞえた所属議員は、21年10月に二階氏が幹事長を退いて以降、しだいに減り始めた。
22年4月には、片山さつき氏と衛藤晟一氏、23年2月と6月には泉田裕彦氏、中川郁子氏が派閥を去った。その後、23年11月30日付で退会届を提出した桜田義孝氏はこう語った。
「私の場合はパーティー券の販売ノルマは300枚だったが、経済的に余裕がなく、さばくのが大変だった。在籍していくことは難しい」
二階派にいたいと思えば、販売ノルマを達成しなくてはならないが、それだけの集金力は自分にはない。足りない分を自腹で負担するのはつらくてやっていけない、ということのようだ。要するに、二階派にいても損得勘定がひき合わなくなったらしい。
さらに、二階派への強制捜査がはじまると、検事総長への指揮権を持つ小泉龍司法務大臣と中野英幸法務大臣政務官が二階派所属であることが問題視され、二人そろって同派を離脱した。これで二階派は39人にまで減り、党内6派閥中、5番目の規模になった。
自見氏が退会の意向を表明したのは、このような状況下だった。二階氏とすれば、自分の値打ちを軽く見られたと感じ、不愉快だったに違いない。
もちろん、二階氏の苛立ちのもとは東京地検特捜部の動きにある。今のところ二階派については会計責任者や秘書らへの事情聴取にとどまっているが、裏金疑惑を奇禍として安倍派と二階派を叩きのめそうとする国策捜査だとすれば、二階氏ら派閥幹部に捜査の手が伸びることは十分に考えられる。
二階派はパーティー収入のうち派閥の収支報告書に記載しなかった裏金が直近5年間で数億円にのぼるとみられている。会長である二階氏が、不記載について知らなかったとは考えられない。政策活動費の問題も含め、巨額の使途不明金を使って無能の金権政治家を増殖させた罪は甚大だ。
二階氏がその責任をさほど感じていないように見えるのは、主流三派の領袖たちも似たり寄ったりであるからだろう。つまるところ、世襲がはびこり競争原理が働かないために人材難となった自民党では、カネ集め競争が政治目的になり、そのためにこの30年の国の停滞を招いてしまったといえる。
もう議論の余地はない。政治資金規正法を改正し、法の抜け穴を塞がねばならない。これを機に、政治資金の出入りをすべて公表するというあたりまえのことを政治家に義務付けられないのなら、岸田首相はすみやかに退陣すべきである。
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