一夜で派閥を乗っ取った「山賊」二階俊博が子分たちにバラまいた“汚いカネ”

 

二階氏に渡った50億6,000万円というカネの使い道

なぜ麻生氏が自見氏を大臣に推挙したかについては、諸説ある。自見氏が北九州市育ちで、“福岡のドン”といわれる麻生氏が目をかけていたというが、実際のところはどうなのだろうか。どうやら、その謎を解く鍵は、“犬猿の仲”といわれる二階派の実力者、武田良太氏との確執にあるようだ。

ともに福岡県を地盤とする麻生氏と武田氏は、いざ選挙となると、たがいに違う候補者を支援し、激しいバトルを繰り広げてきた。武田氏が二階元幹事長の片腕であることから「麻生VS二階」の分裂選挙という構図で報道されることも多かった。

二階派は昨年9月の内閣改造にあたって、2人の所属議員の入閣を要請していた。1人は、法務大臣に就いた小泉龍司氏だが、もう1人は自見氏とは別人だった。岸田首相が当初、閣僚数の割り当てを2人から1人に減らしたいと打診してきたのを派幹部が聞き入れず、最終的には2人の起用となったが、自見氏の入閣は二階派幹部にとって“寝耳に水”だったようだ。

ただでさえ、非主流派になって岸田首相に冷遇されているという“ひがみ根性”が二階派にはある。そのうえ自見氏の入閣に麻生副総裁がからんでいるようだとわかり、しこりが膨らんだ。

二階派を退会すると自見氏が表明したことに対し、二階氏が「大臣になりたい時はワンワンと言っておいて、礼儀を知らない」と激怒したというのも、二階派内の空気を反映したものだろう。

さて、二階氏が安倍政権の幹事長だった時期に、この派閥の入会者が増え、規模が大きくなったことは周知の通りである。その原動力となったのは、二階氏が発揮したカネの力だ。

歴代最長の約5年にわたって幹事長を務めた二階氏は、党から「政策活動費」の名目で、これまでに約50億6,000万円も受け取っていたことが政治資金収支報告書から明らかになっている。「政策活動費」の問題は、使途を公表しないでいいとされていることだ。国から巨額の政党交付金を受け取っておきながら、なぜ裏金まがいの使い方をするのか、実に不思議である。

そもそも、政党が多額の献金を受けた企業や団体の利益をはかることがないよう、「国民一人当たり250円」の税負担で政党に資金提供することにしたのが、政党交付金という制度である。

2022年の政党交付金総額は、315億円ほどだが、そのうち自民党本部に159億8,200万円が支払われている。自民党の同年の収入総額が248億円ほどだから、65%近くを政党交付金が占めていることになる。

その党本部の会計から、資金をどのように支出するかを決める責任者が幹事長である。歴代の幹事長も豊富なカネと選挙の公認権を握って権勢を拡大してきたのだが、二階氏の場合は、突出して自らに支出する「政策活動費」の額が大きい。最も多かった2019年には、10億円超が支払われている。

そこから「モチ代・氷代」と称して選挙資金をばらまいたり、こっそり特定の候補者にテコ入れしたかもしれないし、飲み食いに使ったこともあるだろう。要するに、「政策活動費」と収支報告書に記載しておけば、使途を公表しないでいいということになってしまっているのだ。国民の血税を好き勝手に使われたら、たまったものではない。

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