また、13年7月にアシアナ航空のボーイング777が着陸に失敗し、火災となり乗客3人が死亡した事故と比較することで、炭素繊維強化複合材とアルミニウム素材の火災における推移の違いに関する有効な知見が得られるのではないか、と指摘されています。
すでに米国などから専門家が来日し検証を進めてますが、乗客が全員脱出するまで機体の形状が保たれた一方で、6時間余りも燃え続けて、ようやく完全に火を消し止められた理由の検証も行われているようです。
ちなみに今回話題になった「90秒ルール」は、アメリカ連邦航空局(FAA)が定めた商用機の安全基準のひとつです。「機内の全非常用脱出口の半分以下を使って、事故発生から90秒以内に乗客・乗員全員が脱出できるような構造にすること」が、製造・販売する航空機メーカーには義務付けられているのです。各航空会社で乗員に課される避難誘導の訓練も、この機体の設計基準に基づいています。
航空業界の安全基準や安全対策は、これまで失われた、あるいは失われそうになった大切な命によって作られてきました。想定外の出来事が起こるたびに使われる「教訓」という簡素な2文字は、何百、何千人のかけがえのない「命」に支えられているといっても過言ではありません。
今回の事故の原因究明にあたる職員の方たちには、年末年始の増便、コロナ禍の閑散期を経た急速な需要の増加、コロナ禍で減らしていた人員の急激な増員体制、コロナ禍での現場での経験不足、さらには北陸の被災地に一刻も早く物資をとどけなけばという任務と使命感…。「世界一忙しい」と言われる羽田空港の管制官の勤務体制なども含め、徹底的な調査を行なってほしいです。
みなさまのご意見、お聞かせください。
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