習近平は本当に「秩序破壊者」なのか。西側の“上から目線”なレッテル貼り

 

見落としてならない中国の民意を汲み取る能力

習政権がいま自国の制度に自信をつけた背景として、先端技術に帆を立てた経済発展から説明されることが多いが、それはむしろ副次的要素だ。

中国が自らのシステムに自信を持ち始めた理由は別にある。見落としてならないのは、「民意を汲み取る能力」だ。

こんなことを書けば独裁政権の風通しの悪さを知らないのかと叱られそうだ。

習近平が3期目の国家主席に当選した直後から、日本のメディアは一斉に「イエスマンで周囲を固めたため政権は、悪いニュースがトップに届かない」と、その危うさを指摘してきたからだ。

だが、本当にそうだろうか。

目下の不動産不況に対し、現政権はバブル退治を継続しながらも、いかに景気を冷やしきらないようにするか、多種多様な対策を繰り出してきた。それが効果を発揮したか否かは別として、現状を把握して対応をしてきたことは誰の目にも明らかだ。

また年が明けた1月2日、米テレビ『CNN』は「中国の習近平主席、経済的苦境に異例の言及」というタイトルで記事を配信した。そのなかで、「(習近平が)『一部の企業は苦境に立たされ、また就職が厳しく日々の暮らしに困る人々もいた』と述べ、中国が「逆風」に直面していることを認めた」と報じた。

むしろ、トップがきちんと現状を把握してることを示す記事だ。

翻って西側を見れば、選挙を通じて民意を汲み取るシステムには、隔靴掻痒のそしりがつきまとう。政治家は票につながるテーマには群がるが、そうでないテーマは放置するという欠陥も指摘される。与野党の攻防が、無責任なばら撒き合戦に陥るという問題もある。

中国には、言論が不自由で異論を認めないという体質への批判はあるだろう。しかし、民意を汲み取る機能も、問題を解決する能力も備わっていると言わざるを得ない。

権威主義との批判についても、中国を批判するアメリカの現状も褒められたものではない。権威に対し「本当のことを口にできない」のはトランプ政権発足後の共和党も同じ特徴を備えてきたからだ。

とくに2021年1月6日に起きた議会乱入事件(以下、事件)以降、その傾向は顕著になったと言わざるを得ない。

事件後、トランプ前大統領に対する批判をにわかに口にし始めた共和党議員の多くが、次の中間選挙で勝つため、再びトランプ批判を封印し、その軍門に下って行った姿は「盲従」との誹りを免れない。実際、アメリカ国内の多くの専門家がこれを「権威主義的な政治」として批判している。

選挙結果を認めず暴力でそれをひっくり返そうとした元大統領を批判できないのだから、深刻である。

アメリカのニュース番組では「あなたは本当に『選挙は盗まれた』と思っているのか?」とキャスターに突っ込まれて言葉を濁す共和党議員の姿がしばしば見られるが、象徴的なシーンと言わざるを得ない。

独裁的な中国に対し、「選挙というブレーキが存在する」ことが、これまでの西側世界の優位性を担保してきたのではなかっただろうか。

果たしていまのアメリカに、そのブレーキは機能していると言えるのだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年1月7日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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