中国の不動産バブル崩壊が「世界経済に混乱をもたらす」は本当か?

 

「華やかなりし」時代への回帰は目指さない中国

その中国はいま、不動産業界が盛り上った「華やかなりし」時代への回帰を目指すのではなく、不動産業界のマイナス分をハイテク製造業へのテコ入れで補おうとしている。

具体的には電気自動車(EV)、太陽光電池、リチウム電池という中国で「新三様」と呼ばれる業種の重視であり、それに加えてエレクトロニクス、航空、通信などの製造業への投資を促進することだ。

世界の報道を紹介する中国メディア・『参考消息』は24日、国連のデータを引用し「22年に中国が世界の製造業の31%を占めたのに対し、米国は16%だった」と報じ、製造業不在の経済強国化をけん制した。

これは中国が未来の自画像を描くとき、単純に西側先進国のたどった道を追いかけるのではなく、それとは異なる発展を目指す一つの動機となっている。

雇用を多く生み出すという点では第三次産業の優位は明らかだ。また分配という意味では不動産業の果たす役割は軽視できない。しかし、それでも中国はあくまで製造業の大国としての地位を維持したまま、第三次産業への依存を深めてゆくことを目標としている。

そのために昨年から力を入れているのが民営経済のテコ入れだ。中国の民営経済は、税収の50%強、国内総生産(GDP)の60%強、技術イノベーション成果の70%以上、都市部の雇用者数の80%以上、企業数の90%以上を担っている。

この民営経済支援のため昨年7月以来、中国は省や委員会レベルだけでも「10以上の文献と200件以上の措置を出した」(CCTV『新聞聯播』1月18日)という。

2023年の全国の民間製造業の投資は対前年比9.4%増。直近では6カ月連続で伸びてきている。

また習政権は起業支援にも熱心だ。投資や起業のマインドが落ちているとされる現状でも、天津市だけで4時間におよそ一社のペースで新たに会社が設立され続けている。

昨年末、上海で開催された「未来のユニコーントップ100カンファレンス」年次総会で示されたデータによれば、中国のユニコーン企業(非上場で時価総額10億ドル以上の企業)は世界の約3割を占めたという。

大規模経済対策を打たないことだけをもって「習近平は裸の王様」と評することは簡単だが、それは果たして実態に即した批判なのだろうか

――(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年1月28日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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