現在、国情院の判断は娘のジュエに傾いている。後継者としてジュエが有力であるということだ。北朝鮮メディアを通じて明らかになったジュエの公開活動の内容と礼遇水準を総合した結論だ。同時に国家情報院は「キム委員長に2013年生まれのジュエの他に性別不詳の子供がいる」として息子の継承可能性も残しているとしている。
娘のジュエが有力な後継者に浮上した理由は大きく3つだ。まず「尊敬するお子様」のような極尊称を使いながら報道される点だ。当初「愛するお子様」だったのが「尊敬するお子様」へと表現が格上げされた。この形容詞一つの違いが北朝鮮などの独裁国家では重要な意味をもってくることは周知の事実だ。
金正恩が主管する各種軍事行事に同行することも、「ジュエ後継者説」を裏付ける根拠だ。2022年2月、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星-17型」の現地指導後、ジュエが金正恩とともに登場した大型政治・軍事行事は20件を超える。
儀典も手厚い。閲兵式で主席団の金正恩の隣の席を占めるかと思えば、軍序列2位の朴ジョンチョン党軍政指導部長がひざまずいてジュエに耳打ちする場面が公開されたりもしている。統一部は、ジュエと関連して「北朝鮮が儀典規範のようなものを作っていく段階」とし、後継者の可能性に重きを置いている。
もちろん、ジュエが後継者という観測はまだ推定に過ぎない。金日成が金正日に、金正日が金正恩に継承した当時と比べるとかなりの違いがある。党の主要職位に任命したりもしていないし、関連事項を下達しなければならないことなどもある。金日成は1980年10月、息子の金正日を公式後継者として公開する6年前、党中央委員会政治委員に任命している。金正日は息子の金正恩を09年1月、党組織指導部に起用し1年後に後継者として公式化した。
北朝鮮の「男尊女卑」思想が根深いのも障害物だ。ジュエを早期に後継者に内定する場合、白頭血統の分裂を招く恐れもある。
これに対し、北朝鮮外交官出身の高永煥(コ・ヨンファン)統一部長官特別補佐官は「ジュエ後継説は時期尚早」と主張してきた。北朝鮮の本質に真に詳しい人たちは、ジュエの後継者説に疑問符をつけている。表面的にはあれだけ露出させているのだから当然「ジュエだろ」という立場をとる人たちは多いが、逆にあれだけわざとらしく露出させているのを見ると「後継者ではない」と考えるのが自然だというわけだ。
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