ロシア・ウクライナ戦争は3年目に突入し、メディアの注目もガザから再びウクライナへと戻った。報道ではウクライナの苦戦が目立った。なかには「ロシア軍を消耗させることに成功した」とか、「領土を奪い還した」といった戦果にスポットを当てウクライナの善戦を強調する報道も見かけたが、メインテーマはあくまでウクライナの苦境だった。
本来、第三者の視点に立てば「外国を当てにして戦争を起こすリスク」にも言及されるべきが、そうした問題意識は中国メディア以外でほとんど見られなかった。
また西側の報道の特徴として、ロシア・ウクライナ問題を中台問題と混同する記事も目立った。そのロジックは「ロシアの勝利は、習近平に台湾侵攻が許されるという誤ったメッセージを与える」というもので、三題噺の域を出ない子供っぽい発想だ。
なぜなら中国は「台湾侵攻こそがアメリカの国益」だと見ているからだ。中国は、民進党の裏側で独立を煽り、習近平政権が武力でそれを食い止めなければならない状況を作ろうとしていると警戒している。
アメリカは自ら直接中国と戦わず、戦争に巻き込み、国際社会から孤立させ経済制裁によって発展を遅らせようとしている、と。台湾も日本も、そのアメリカの愚かな駒に過ぎない。それこそ中国がロシア・ウクライナ戦争から得た教訓だ。
一方でロシアとの関係では、中ロ関係の強化という「棚ぼた」が中国を利したという見方もある。アメリカはロシア・ウクライナ戦争の勃発と同時に「中ロ」を一括りにして国際社会から孤立させようと動いた。中ロはその圧力の下で手を結んだとも言われるが、決してそうではない。
中ロ首脳会談が「限界のないパートナーシップ」を宣言したのは北京の冬季オリンピックでのことで、ロシアがウクライナ侵攻する3週間ほど前のことだ。そして侵攻後のロシアの孤立は、中ロ関係を未曽有の深みへと導いた。
アメリカの政治雑誌「POLITICO」はメールマガジン(2月22日)で、元国防副次官補のエルブリッジ・コルビーの発言を引用。ロシアは「北京との協力に依存する虜囚的なジュニア・パートナーになった」と評価したほどだ。つまり中国は〈2年前には想像もできなかったレベルのロシアへの経済的影響力〉を手に入れ、いまでは〈ロシアの消費財の大部分を供給する〉までになった、と。
中国の輸出業者には巨大な専用市場が生まれ、人民元決済の拡大で元の存在感も高められるだけでなく自らのアキレス腱でもあったエネルギー問題で、ロシアの石油とガスを安く入手できるルートを確保できたのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年2月18日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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