2024年1月からスタートした新NISA。昨年までの旧制度から大きく変わったその「お得度」がメディアでも盛んに報じられていますが、一方で「危険性」を指摘する声が上がっているのも事実です。識者はこの新NISAをどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村さんが、新制度の特徴やメリット等を詳細に解説。個人投資家が新NISAを賢く使うコツをレクチャーしています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:新NISAは辞めた方がいいのか?
「いいことずくめ」の新NISAに落とし穴が?
今年から新NISAが始まりましたね。この新NISAは、国や金融機関がけたたましく喧伝する一方で、「新NISAは危ない」というような言説もチラホラ見かけます。本当のところはどうなのでしょうか?今回はこのような説の真偽を考えてみたいと思います。
そもそもNISAというのは年間120万円までの投資であれば、そこから得た値上がり益や配当金(分配金)は非課税になる、という制度でした。
従来のNISAは、年間120万円ずつ投資の枠がもらえ、これを5年間続けることができました。だから最大枠が600万円となります。つまり最大600万円までの投資について、そこから得た値上がり益や配当金(分配金)は非課税になっていたわけです。
このNISAが、今年から大幅にリニューアルされたのです。年間120万円までだった投資枠が360万円まで拡大され、生涯で総額600万円までだった投資の枠が1,800万円まで増えました。一挙に3倍に増えたわけです。しかも、5年間だった非課税期間は無期限になりました。
ですが、いいことずくめのように見えるこの新NISAに関して、「新NISAは損をする。国に騙されるな」というような説が一部では言われているのです。
森永卓郎氏の“警告”をどう解釈するか
経済評論家の森永卓郎氏や荻原博子氏なども、「新NISAをしてはいけない」というようなことを言っておられます。
筆者は、経済評論家としての森永卓郎氏を敬愛しておりますし、彼の言説を大いに参考にしている面もあります。
もちろん、彼の主張すべてに賛同するというわけではありません。
で、この「新NISAはしない方がいい」という説については、少し言い過ぎというか、言葉足らずの点があると思われます。
森永卓郎氏が「新NISAをしない方がいい」と言っている理由をざっくり言うと「今後株価が下がるから」ということです。
「新NISA」には「つみたてNISA」という制度があります。この「つみたてNISA」は、年間120万円まで政府が指定した金融商品に投資できる、という制度です。
このつみたてNISAの対象になっている金融商品のほとんどが、今後、世界経済や日本経済が順当に成長したときに儲けがでる商品となっています。逆に言えば、世界経済や日本経済が大きく失速したような場合は大損になることもあるのです。
そして森永卓郎氏は、「現在の世界の株価はバブルの状態になっており、必ず遠くないうちにバブルが崩壊する」と述べられています。
だから森永卓郎氏は、「新NISAはしてはならない」と言われているわけです。確かに、これまでのところはその通りです。
成長投資枠なら「金ETF」などによるリスクヘッジも可能
が、新NISAには、ほかにも特徴があります。新NISAには、「つみたて投資枠」のほかに「成長投資枠」というものがあり、これは「つみたて投資枠」の2倍の年間240万円となっています。
そして、この「成長投資枠」というのは、投資する株式や投資信託などを、自分で自由に選ぶことができます(一部の高リスクな金融商品を除いて)。
投資信託の商品の中には、企業に投資するのではなく「金」や「プラチナ」に投資するという商品もあります。そういう金融商品を新NISAで購入すれば、金やプラチナを購入するのと同じようなリスクヘッジが可能なのです。
また投資信託の商品の中には、「株価が下降したときに値が上がる」というような、逆張りの商品もあります。こういう商品を購入しておけば、森永氏が言うような「世界経済が失速したとき」のリスクヘッジにもなるわけです。
つまり新NISAは、森永卓郎氏の予測通りに「世界規模でのバブルの崩壊」が起きたとして、その対策としての利用もできるのです。
資産運用で「無税」は大きなメリット
新NISAは、その仕組みだけを見れば、売買益や配当金に税金が課せられないのだから、普通に投資をするよりは、有利な面が大きいと言えます。
新NISAを安易に推奨する国や金融機関のいう事を鵜呑みにするのではなく、金融投資には大きなリスクがあることや、森永氏の言うように今後、世界規模のバブル崩壊が起こる可能性もあることは、念頭に置いておくべきでしょう。
が、自分の資産を守るリスクヘッジの方法として、新NISAを排除すべきではないと筆者は思います。つまりは、特徴をよく理解した上で、有利な部分に関しては「賢く使うべき」だということです――(大村大次郎氏のメルマガでは、この記事の続きとして、やっぱり気になる「株価上昇は続くか?」についても詳しく解説。初月無料のお試し購読で今すぐ受け取ることができます)
大村大次郎さんの最近の記事
初月無料購読ですぐ読める! 3月配信済みバックナンバー
- 「新NISAは辞めた方がいいのか?」「株価上昇は続くか?」「財務省が肥大化した理由」(3/16)
- 「副業して税金還付を受ける方法2」「税務署の申告相談所の賢い使い方」「税金の”在日特権”はあるのか?」(3/1)
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
- 「副業して税金還付を受ける方法1」「ふさけるな!子育て支援金は二重取りだ!」「国税庁は政治家の裏金を徹底的に調べるべき」(2/16)
- 「頂き女子りりちゃんの脱税」「脱税の世界史」「財務省の大罪3~なぜマルサは大企業に入らないのか」?(2/1)
- 「サラリーマンのための還付申告講座」「税務相談室でウソを教えることもある」「財務省キャリア官僚の大罪2」(1/16)
- 「風俗店で働いていた税務署員」「パーティー券裏金議員たちは脱税で逮捕されるか?」「財務省キャリア官僚の大罪1」(1/1)
- 「温泉療養で税金を安くする」「スポーツジムで税金を安くする」「パーティー券裏金問題の真実1」(12/16)
- 「退職、転職時の税金還付漏れに注意!」「消費税は世界最悪の税金」「筆者がコロナワクチンに最初から懐疑的だった理由」(12/1)
image by: Shutterstock.com