イスラエルの「イラン本土」報復攻撃、専門家が最悪シナリオを憂慮する訳。ネタニヤフ首相が予定調和破り「核使用」決断も

 

ネタニヤフの「危険な賭け」は世界戦争を引き起こす

本格戦争になった場合、現在、ガザでの作戦を遂行中という現実を考慮しても、イスラエルが戦力面で有利と言われていることと、ネタニヤフ・ファクターで「中東情勢の緊迫化は自らの政治生命の延命と権威の回復にとって追い風」という意識が働くことから、ネタニヤフ首相が賭けに出ることも十分に考えられます。

ただし、その場合、イスラエルの背後にいるアメリカ、英国、フランスは必然的にイスラエル側に立ってイランと直接的に交戦する羽目になり、イラン側にはロシアと中国が戦略的パートナとしてつくだけでなく、シリア、レバノン、そして親イラン抵抗勢力が抵抗の枢軸として参戦することになるため、その戦争はアラブ諸国と東地中海、東アフリカ、南欧諸国などを巻き込んで大戦争に発展し、すべての人々と原油市場に破壊的な影響を与えることになります。

中国はすでに手を打とうとし、王毅外相がサウジアラビア王国に飛び、ファエサル外相と“反応を控えよう”と自制を要請して、事態の緊迫化を防ごうとしています。そしてアメリカ政府もこの点では中国政府と協力しているという情報もあり、何とかドミノ現象を防ぎたいと躍起のようです。

イランも臨戦態勢を取っていると思われますが、イラン政府内では「今回の報復攻撃をもって、イランのイスラエルに対する抑止力は回復できたと思われるし、いつでもミサイルを撃ち込めることを印象付けたことで十分。これでイランに手を出したら大変なことになるというメッセージは伝わっただろう」という認識が多数のようです。

しかし、今、“イランからイスラエル本土へのミサイル攻撃”という格好のネタを手に入れたネタニヤフ首相が、果たしてそれを利用せずにいられるかは未知数です。

イスラエル建国の父であるベングリオン氏は、後進への助言として「大国の助けなく、イスラエルは単独で戦争するようなことがあってはいけない」という教えを残していますが、ネタニヤフ首相はその教えを守って、戦火を地域のみならず、世界に拡げないという最後のラインを守ることができるか、非常に懸念しています。

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