うつ病の治療法の一つとして抗うつ薬が用いられますが、薬から十分な効果を得られないうつ病は、「治療抵抗性うつ病(TRD)」と呼ばれるそうです。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、このTRDの家族内での伝搬に関する台湾での大規模調査結果を紹介。環境要因等の可能性もあり、解釈は慎重にしたいとの補足つきで、TRDだけでなくさまざまな精神疾患の発症リスクが高まるとの結果を伝えています。
抗うつ薬を使用しても十分な改善を認めないうつ病は家族内で発症するリスクが上昇
◎要約:『治療抵抗性うつ病がある場合には、家族内で(他の精神疾患を含めて)発症するリスクが上昇する可能性がある』
複数の抗うつ薬を使用しても十分な改善を認めないうつ病について、「治療抵抗性うつ病 treatment-resistant depression (以下、TRDと表記)」と呼ばれることがあります。
今回は、TRDが家族内で受け継がれるかどうかを大規模な医療記録から調べた研究をご紹介します。
治療抵抗性うつの家族内伝播
Susceptibility to Treatment-Resistant Depression Within Families
台湾における研究で、全国的な健康保険データを元にしており、治療抵抗性うつ病(3つ以上の抗うつ薬を使用した経過がある場合)の34,467人を対象としています。
対照の健常者137,868人と比較して、1親等の家族に治療抵抗性うつ病等の精神疾患が伝播するかを調べています。
結果として、以下の内容が示されました。
- 1親等の家族にTRDがある場合には、TRDを発症するリスク(adjusted relative risk)は9.16倍となっていました。
- 同じく、自殺による死亡率も高く、他の疾患については、統合失調症2.36倍、双極性障害3.74倍、大うつ病3.65倍、ADHD2.38倍、自閉スペクトラム症2.26倍、不安障害2.71倍、強迫性障害3.14倍となっていました。
関連性については上記のような結果でしたが、これが遺伝性をどの程度反映した結果なのか、随伴する環境の要因によるのか等、解釈を慎重にしたい内容でした。
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