島根でもズレまくりだった岸田首相
なにしろこの選挙に政権の浮沈がかかっているのだ。自民党は、今回の3つの補選のうち、東京15区と長崎3区で候補者を出さず、不戦敗を選んだ。長崎県の場合、次期衆院選で議席が一つ減るということもある。東京15区は、小池都知事が擁立した候補者に相乗りしようとして候補者自身に拒否された。が、いずれにせよ基本的には同じ自民党の前職議員が不祥事で議員辞職し、勝てる見込みがないからだ。
せめて保守王国といわれてきた島根だけでもと担ぎ出したのが地元出身の財務官僚、錦織氏だった。
全日空1087便で米子空港に降り立った岸田首相は松江市内でさっそく街頭演説にのぞんだ。
「自民党改革ののろしを、ここ島根から上げていただきたい」
やはり、ズレている。党改革は総裁である岸田首相が本気にならないとできない。自分自身の中にのろしを上げるのが先決だ。それがないから、ろくな改革案が出てこないのだ。中身のない演説にがっかりした有権者は多かっただろう。
案の定、投票結果は、岸田首相にとって無残なものになった。亀井候補が8万2691票、錦織候補が5万7897票。立憲の候補に実に2万5000票近くもの差をつけられたのだ。
小選挙区制導入以来、細田博之氏が議席を独占してきた自民王国の牙城があっけなく崩れ落ちた瞬間だった。
「何をしでかすかわからない」岸田総理に党内で警戒感
国民が物価高騰と重税感にあえぐなか、裏金をフトコロに入れて税を逃れてきた自民党にしょせん勝ち目はないということか。
普通なら、首相自ら身を引くところである。岸田首相では選挙に勝てないという声が党内に満ち、総裁の座から引きずり下ろす動きが出ても一向に不思議ではない状況だ。しかし今のところ、政情は奇妙な安定を保っている。
裏金問題を背景に岸田首相自身が主導した「派閥解消」や「安倍派潰し」が想像以上に功を奏し、二階俊博元幹事長や世耕弘成前参院幹事長が党内の権力争いから姿を消した。安倍派の有力議員たちは根こそぎ政治力を奪われた。
「何をしでかすかわからない」。岸田首相への警戒心がくすぶるなか、誰もが様子見を決め込んでいる。









