さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
あなたの「文化」は、「労働」に搾取されている
現代の労働は、労働以外の時間を犠牲にすることで成立している
明治時代になってはじめて、黙読という文化が生まれた。当時、活版印刷によって大量に書籍が印刷できるようになり、大量の書籍が市場に出回る。すると個人の趣向に合わせた読書が誕生した
労働者階級の立身出世物語。それが当時の世界的ベストセラーの内容だったのだ(明治時代)
大正期のベストセラーは、自己の改良よりも自己の苦しみに目を向ける
明治中後期、働いて学資を得る苦学や、通信教育による独学がブームになっていた
現代の私たちが持っている「教養を身につけることは自分を向上させる手段である」といううっすらとした感覚は、まさに「修養」から派生した「教養」の概念によるものだった
明治の「修養」主義は、大正時代、ふたつの思想に分岐していった。一方が戦後も続くエリート中心の教養主義へ。一方が戦後、企業の社員教育に継承されるような、労働者中心の修養主義へ
自分は労働者ではない、自分はちゃんとした家のちゃんとした主人なんだ、と誇示したい当時のサラリーマン層にとって円本全集は打ってつけのインテリアだった
源氏鶏太の小説は、雑誌に1回ずつの読み切りを連載する「読み切り連載」形式をとることが多いのも特徴だ。つまり、サラリーマンが雑誌で、前のあらすじを覚えてなくとも読める小説となっている
なぜ処世術やモテ術を語った「BIG tomorrow」は1980年代に人気を博したのか? 答えは簡単で、サラリーマンの間で「学歴よりも処世術のほうが大切である」という価値観が広まったからだ
自分と他人がうまくつながることができない、という密かなコンプレックスは、翻って「僕」「私」視点の物語を欲する
情報も自己啓発書も、階級を無効化する
自分から遠く離れた文脈に触れること--それが読書なのである
断捨離やこんまりに触れていながら、本文にも参考文献リストにも書名が出てこないのが不思議ですが、そこを除けば引っかからずにすらすら読める内容です。
大正時代のトレンドと現在の日本のトレンドが酷似している話、階級意識が読書に与える影響などは、読んでおくと面白いと思います。
言われてみると、大正末期に出された『痴人の愛』のあらすじ(田舎から出てきた真面目なサラリーマンが、カフェで働く美少女を引き取る)は、現在の人気漫画や「頂き女子」などのトレンドと似ていますね。
最後に提案している「半身社会」は、将来的な人手不足や日本の競争力低下、それに伴う地政学的リスクを考慮しておらず、日本人全体には当てはまらない内容だと思いますが、読み物としてはよくできていると思います。
ぜひ、読んでみてください。
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