あなたは最近、読書をしていますか? スマホばかり見てしまって本を読まなくなったな…なんて思っているのではないでしょうか。今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者である土井英司さんが、文芸評論家の三宅香帆さんが日本人の読書の変遷や、ベストセラーになる本の考察について語った一冊を紹介しています。
【労働史と読書史から現代の読書を考える】⇒『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅香帆・著 集英社
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、文芸評論家、三宅香帆さんによる話題の新書。
明治時代から2010年代までの労働史と読書史を振り返り、われわれ日本人の読書がどう変遷してきたか、どんな背景でどんな本がベストセラーになったかを考察する、興味深い内容です。
ちなみに目次はこうなっています。
第一章 労働を煽る自己啓発書の誕生 --明治時代
第二章 「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級 --大正時代
第三章 戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか? --昭和戦前・戦中
第四章 「ビジネスマン」に読まれたベストセラー --1950~60年代
第五章 司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン --1970年代
第六章 女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー --1980年代
第七章 行動と経済の時代への転換点 --1990年代
第八章 仕事がアイデンティティになる社会 --2000年代
第九章 読書は人生の「ノイズ」なのか? --2010年代
日本初の(男性向け)自己啓発書『西国立志編』に始まり、日本における自己啓発書の歴史とそのメッセージ、社会への影響などを考察しており、興味深く読むことができました。
「教養」=エリートが身につけるもの
「修養」=ノン・エリートが身につけるもの
という、大正時代に生まれた図式の話、この時に生まれた「修養」の延長線上に、現在ビジネスパーソンが読む教養本があるという指摘は興味深く、激しく頷きながら読みました。
源氏鶏太氏のエンタメサラリーマン小説やカッパ・ブックスの隆盛、大ヒット雑誌「BIG tomorrow」の分析などを読むと、なぜ当時、長時間労働していたサラリーマンがこれらのコンテンツを消費したのか、よくわかると思います。
さすが文芸評論家が書いているだけに、『窓ぎわのトットちゃん』『ノルウェイの森』『サラダ記念日』の共通点や、「私」視点の物語がどんな時に売れるかという話は、読み応えがありました。
ミリオンセラーの考察などもあるので、著者や編集者は、読んでおくと企画のヒントになるかもしれません。