京都で三百年続く老舗を背負った父がお風呂屋さんで教えてくれた「商いの心得」

 

現在、京都市で麩屋を商う当社の創業は1689年です。

御所で賄い方(調理係)をしていた初代半兵衛が麩の製法を習得し、町に出て麩屋を開いたのが始まりでした。

その後三代目が、当時商人向けの道徳教育を行っていた石田梅岩の「石門心学」に心酔してその門下に入り、自ら師範の代用を務めるほど熱心に学問をしたそうです。

その三代目が店の家訓としたのが『荀子』にある「先義後利(義を先じて、利は後とする)」です。

「義」とは人としての正しい道をさします。

商人においては、正しい商人の道、と解釈してよいでしょう。また「利」とは利益ではなく、強欲、名誉欲、出世欲といったことをさすのだと教わりました。

ただし梅岩は「利益をあげない商人は商人にあらず」と述べ、商人は人様のお役に立つことによって利益を得なさいと説いています。

また、その根底として必要なのが「正直・勤勉・節約・貯蓄」の精神だと述べました。

梅岩が「実践しない学問には何の価値もない」と強調したように、父も

「学校の勉強も大事やけれど、わしが話すことをおまえはしっかり実践していかんとあかん。

 だから、“正直に生きよ”ということが分かったら、真っ直ぐ、正しい心で生きていくことが大切や」

と常々話していました。

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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