同じようにジョセフ・バイデン大統領も、19年には自らSNSを通じてこう発信している。
「トランプは基本を知らない。彼は自分の関税は中国が支払っていると考えている。経済学部の新入生なら誰でも、アメリカ国民がそれを支払っていると答えることができる」
「トランプ氏が中国との無責任な関税合戦でダメージを受けている農家や労働者、消費者に関心がないことが改めて証明された。他人の痛みに無関心であるから、安易に強気な態度に出られるのだ。私は彼の無意味な政策を撤回する」
関税を負担するのはアメリカ人との説はかなり一般的だ。5月15日の定例記者会見では汪文斌報道官がムーディーズの試算を引き合いに、「追加関税の92%はアメリカの消費者が負担することになり、その額は年間約1300ドルになる」と答えている。関税や補助金からの排除で中国製品を締め出すそうとしても、ベトナム経由やメキシコ経由で入ってくるのが実態だ。
不思議なことはアメリカの自動車メーカー各社に中国排除の動機がないのに、政治が率先して政策を打ち出していることだ。これは欧州委員会(EU)にも見られる傾向だ。通常、制裁関税は国内(域内)の産業からの不服申し立てを受けて調査が始まるからだ。産業界はいま、政治が先行する制裁にむしろ戸惑っているのだ。
しかもアメリカが中国製EVを排除することで、直ちに中国メーカーが困ることはない。事実、EV産業のリーディングカンパニー、BYD(比亜迪/Build Your Dreams)は、あえて無理をしてアメリカ市場への進出を考えていないと公言する。
世界を俯瞰して見れば、最大の自動車市場は中国だ。ASEAN各国の市場も中国製との相性が良く、ドイツ三大メーカーを抱える欧州も最終的にはアメリカとは別の選択をすると考えられている。
アメリカが本気になれば中国製EVの排除は可能だ。しかし、そこで国際競争力を備えたEVが生まれてくるのか、といえば──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年5月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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