中国製EVの関税を4倍に!バイデン追加関税に見る民主選挙の弊害

United States of America president Joe Biden isolated first floor on black background during a speech in Washington DC in 2022United States of America president Joe Biden isolated first floor on black background during a speech in Washington DC in 2022
 

5月14日、アメリカのバイデン政権は電気自動車(EV)や半導体など7分野に追加関税を課すことを発表。EVに関しては現行の25%から100%に引き上げるとしました。こうした刺激的で短絡的な政策を取ってしまうことについて、民主選挙の弊害の一つと論じるのは、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、「関税を負担するのはアメリカ国民である」と、トランプ時代の制裁関税を否定していたバイデン氏の主張を紹介。産業界からの要望もないのに政治が先行する事態を冷ややかに観察しています。

制裁や嫌がらせでは中国を止められないことの証明となりかねないバイデンの追加関税

民主選挙のない国──。中国の政治体制を西側先進国が批判するときの常套句だ。裏側には民意を汲み取る制度を持つ国の優越感と自負が滲む。もちろん、政治に民意を反映させるシステムは大切だ。だが、方法は一つではない。しかも高い理念とは裏腹に、民主選挙には弊害も多い。どの政治家もライバルを倒すことに拘泥するあまり、短絡的で刺激的な政策に走る傾向を帯びるからだ。

今年11月に予定されるアメリカ大統領選挙は、そうした弊害が顕著となるケースかもしれない。世界を巻き込んで行われる選挙であり、常に攻撃の対象を求める。現状、その最高のターゲットは中国だ。

5月14日、バイデン政権は中国からの輸入品のうち電気自動車(EV)や半導体、太陽光発電関連製品など7分野について、制裁関税を大幅に引き上げると発表した。日本のメディアも反応し、「バイデン政権、中国製EVの関税を4倍の100%に引き上げ…対中強硬姿勢アピールか」(読売新聞)などと報じた。

今回の追加関税が中国のEVを狙ったものであることは言を俟たない。だが一方で政治的な要因も小さくない。アメリカのメディアの多くは、むしろ後者にスポットライトを当てた。

バイデン関税が発表された直後には、早速ドナルド・トランプ前大統領が、「もっと前にやるべきだった。ほかの自動車や多くの製品にもやらなければならない」とけん制。ガソリン車にも関税をかけるべきだ、とバイデンの手緩さを攻撃した。確かにアメリカ市場における中国の新エネルギー車のシェアは僅かに2%しかなく、狙うならガソリン車の方が効果的だ。しかし中国車の対米輸出は22年が最高で14764台。昨年は10970台と存在感は薄い。

EVはこれからの市場で、のびしろのある産業だ。それを中国に奪われたくないとするバイデン政権の動機は理解できる。米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、「中国がメキシコ経由でアメリカにEVを輸入する動きを厳しく監視する」とまで語った。

だが、追加関税が妙手だと報じた米メディアは少ない。そもそも数年前までバイデン政権は、トランプ時代の制裁関税に否定的な考え方を示してきた。米公共放送PBSは、ジャネット・イエレン財務長官を迎えた番組(「NewsHour」5月15日)のなかで、「長官の見解は以前と変わったのか?」とこう突っ込んでいる。

「21年7月、長官はトランプ時代の関税について訊かれ、『関税は消費者への課税である。場合によっては国民に痛みをもたらすかもしれない』とおっしゃっていますよ」

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